Hospital Up Diary

新人医療事務のプチ勉強会

【重度心身(体)障者医療費助成制度】マル障の取り扱いについて

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地方単独医療費助成制度のひとつ通称【マル障】重度心身(体)障害者医療助成制度ですが、助成制度の名前自体も自治体により異なるようです。詳細は自治体ホームページ等で確認ください。ここでは概要と他の障害者医療費助成制度と一緒にまとめていきたいと思います。

今回は参考に埼玉県の制度をベースにまとめました。

 

重度心身(体)障害者医療費助成制度とは

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障害がある方とその家族の経済的負担を軽減するため、医療機関を受診した場合の医療費の一部負担金を県と市町村で助成する制度です。

引用 埼玉県ホームページ 重度心身障害者

自治体により取り扱いが異なる「地方単独医療費助成制度」になります。

障害者の経済的援助を目的として自治体が定める一定の条件のもと認定されたものについて医療費の助成をする制度となります。

制度対象者に交付される受給者証に〇印に障の文字が入っていることから、通称「マル障」と言われています。以下、マル障と紹介していきます。

 

対象者と受給者証

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マル障の対象者は自治体により若干異なります。医療機関都道府県下の条件は覚えておくといいでしょう。大枠として、「障害者手帳」「養育手帳・愛護手帳・愛の手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の所持者が認定に関わってきます。他にも自閉症なども対象となる地域があります。

対象者となる方

身体障害者手帳1~3級の交付を受けている方

療育手帳マルA、A、Bの交付を受けている方

精神障害者保健福祉手帳1級の交付を受けている方(ただし、精神病床への入院費用は助成されません)

後期高齢者医療制度の障害認定を受けている方

引用 埼玉県ホームページ 重度心身障害者

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 市町村単独で対象者を拡大している地域もあります。調べたい市町村ホームページを確認してくださいね

ちなみに各手帳はイラストのような方が対象で交付されるものになります。各手帳が交付されただけでは医療助成は受けれないため、マル障の申請が別途必要になります。手帳では医療費助成は対応できないので新人さんは注意です。

対象者に認定された場合は「受給者証」を交付されます。この受給者証を医療機関や薬局へ提示して初めて医療費の助成を受けることができます。

 

対象者とならない方

生活保護などを受けている方

小規模住居型児童養育事業者又は里親に養育されている方

市町村の乳幼児医療費助成制度又はひとり親家庭等医療費助成制度に登録されている方

平成27年1月1日以降に65歳以上で新たにこの制度の対象となる障害者手帳の交付を受けた方

詳しくはお住まいの市町村・町村役場にお問い合わせください。

引用 埼玉県ホームページ 重度心身障害者

 

受給者証の有効期限

マル障には有効期限があり、次のいずれか早く到来する日までが有効期限となります。

①原則3年間(受給者となった日以降3回目に到来する7月31日まで)

②65歳に到達し、後期高齢者医療制度に移行した場合はその前日まで

知的障害者の場合は、児童相談所等での次期判定年月の末日まで

身体障害者の再認定が決められている障害の場合は、その再認定次期まで

自治体により異なる場合があります。

 

給付内容と窓口対応について

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医療保険の一部負担金が助成(窓口無料)になります。入院中の食事代は助成の対象になりません。健康保険を優先的に利用し、最終的に自己負担する医療費をマル障で助成するイメージです。

助成対象となる医療費は

医療機関において入院・通院をした際に支払う医療保険の一部負担金の額です。医療費・薬剤費・治療用装具の一部負担金などが該当します。入院時の食事療養標準負担額、生活療養標準額は、助成の対象ではありません(助成対象としている市町村もあります)。

引用 埼玉県ホームページ 重度心身障害者

住所地で取得したマル障はその都道府県下の医療機関・薬局でしか窓口無料になりません。県外の医療機関はマル障を取り扱う事ができないため注意しましょう。

代わりに、市役所へ事後申請すれば自己負担分が返金される制度があることをご案内しましょう。

マル障による鍼灸院等の取り扱いの参考はこちら(東京都福祉保健局)

 

地方単独医療費助成制度のおさらい

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地方が医療助成する制度はいくつかありますが、原則的な取り扱いは一緒ですのでおさらいです。いわゆる福祉医療、マル乳(子)、マル障、マル母(親)、マル精などがあります。イラストのようになっていますが、基本的には「自治体により異なる」「県外病院では窓口利用できない」「給付に上限がある可能性がある」という事です。

そして医療費助成内容も同じのため、複数の制度を受けることは基本的にはありません。その時の優先順位もイラストの通りですが、これも自治体により若干異なるようです。

 

障害者医療制度の併用(他公費医療制度との併用)

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公費医療制度の中で障害者に関わる医療制度や持病にかかわる医療制度が複数存在します。各々の医療制度の趣旨は違いますが、複数に該当する場合があるため、併用を取り扱う可能性があります。

原則として、公費併用の手順として①健康保険→②国の公費制度→③地方助成の順位で適応して処理をします。

 

例【マル障と自立支援医療制度との併用】

①ますは健康保険を利用し、3割の自己負担となります。

②3割の自己負担から自立支援医療制度を利用し、1割の自己負担となります。

③1割の自己負担からマル障を利用し、自己負担0円となります。

POINT自立支援医療の自己負担上限管理票がある場合は、マル障を適応する前の医療費を記載すること。自立支援医療には「軽症高額・高額長期」など医療助成のルールがあるため、自己負担0円でも医療費の記載をしなければいけません。

 

「マル障で自己負担0円になるなら自立支援医療はいらないのでは?」と思いませんか。

どうやら公費の財源的な問題があるようです。公費の支出が国か自治体かで負担する側は大きな違いがあります。自治体は国の制度で支出が少なくなれば、もちろん負担軽減に繋がります。マル障で自立支援医療対象者は自治体から案内される可能性が高いですね。

病院としては手続きが複雑になるので、出来る事なら一元化してほしいものです。

 

マル障と後期高齢者医療制度の問題点f:id:Hospital-UP:20200728213622j:plain


通常65歳以上の場合は後期高齢者医療制度へ移行し、後期高齢者福祉医療制度=マル福を適応することで、自己負担助成を受け続けることができます。

ここで問題となるのが、後期高齢者医療は個人単位での加入で被保険者となることです。移行に伴い被扶養者で保険料を支払ってこなかった人も保険料が発生するためです。65歳以上の障害高齢者は、後期高齢者医療制度への加入は任意とされていますが、マル障の助成を受けるため、実質加入が強制状態となっています。

これが社会問題となり、なんやかんやで大多数の都府県では65歳以上でも引き続きマル障等を受けられるようになりました。一部の道県では未だ適応除外となっているままです。