Hospital Up Diary

新人医療事務のプチ勉強会

【自立支援医療制度】精神通院・更生・育成の種類について

 

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 日本にはいろいろな医療の助成制度があります。今回は「自立支援医療制度」についてまとめていきたいと思います。精神科や透析センターなど様々な所で頻度の高い助成制度と思われますので復習がてら見ていただければと思います。

 

自立支援医療制度の概要

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自立支援医療制度には区分別に3つに分かれています。自立支援医療とはパッケージの名前なんですね。そして管轄は国になります。地方自治体単独の障害者医療助成とは別のものになりますので、切り離して考えましょう。

自立支援医療とは障害者に対する支援として医療費の扶助を目的としたものになります。

自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。

引用:厚生労働省ホームページ 自立支援医療制度の概要 

 

対象者について

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その内訳は①精神通院医療②更生医療③育成医療に分かれます

  • 精神通院医療精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者
  • 更生医療身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上)
  • 育成医療:身体に障害を有する児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満)

 引用:厚生労働省ホームページ 自立支援医療制度の概要 

 

医療費の助成内容

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自立支援医療は3つのどの医療助成でも、医療費が1割になります。さらに世帯所得によって限度額に上限が設定されています。逆に一定所得以上の場合は助成対象の患者さんでも公費負担を受けれない可能性があります。

中間所得以下は医療費の助成が受けれるため対象の場合は必ず申請した方が良いでしょう。障害医療は長期に及ぶことが想定あれるため、医療機関でも制度の説明を出来るだけの知識は必要ですね。

より詳しい所得制限は「利用者負担の基本的な仕組み」で参照できます。

 

申請と利用方法

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申請窓口は最寄りの保健所になります。申請後に審査を経て受給者証を交付されます。

申請方法は基本的には一緒ですが、お住まいの市町村のホームページにアクセスしてみましょう。

申請方法の一例

事前申請となります。指定医療機関で医療を受ける前に申請してください。

  1. 指定医療機関から所定の様式の「意見書」を書いてもらってください。
  2. 必要書類をお持ちのうえ各区福祉保健センターにお越しください。
  3. 意見書の内容に基づき、障害者更生相談所で更生医療が認められるかどうかの判定を行います。

引用:横浜市ホームページ

患者さんだけではなく、医療機関自体も自立支援医療を受け付ける病院として事前に都道府県へ指定医療機関としての届出をしている必要があります。

指定医療機関以外では公費の医療助成を受けることができません。

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患者さんが気を付けることとして、医療機関が指定医療機関だったとしても、事前に登録医療機関として申請しておく必要があります。

事前に患者さんは診察を受ける病院を申告しておく必要があります。薬局も同様です。

そして登録医療機関は原則1ヶ所になっているため注意しましょう。仮に登録していない医療機関で受診をした場合は、後日担当窓口へ事務手続きを行い返金を受けられるかもしてません。

 

【法別21】精神通院医療

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精神通院医療は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第5条に規定する統合失調症、精神作用物質による急性中毒、その他の精神疾患てんかんを含む。)を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する病状にある者に対し、その通院医療に係る自立支援医療費の支給を行うものです。

引用:厚生労働省ホームページ 自立支援医療の概要 

 精神疾患は長期治療が必要なケースが多く、経済的にも窮地に追い込まれる可能性が高いです。精神疾患を治療し、自立を支えるために医療費の助成を行う制度です。

適応疾患はこちらで確認できます。あくまで通院(外来)での助成となります。

 

【法別15】更生医療

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障害者手帳を有している方で、医療・治療によりその障害が軽減できると見込まれる場合に対象となります。特に透析患者さんは一般的に対象となる可能性が高いと思われます。病院での事務量が増えますが、確実に患者さんの経済的負担を軽くできるため、病院でも制度の案内を出来ると◎ですね。

 対象となる障害と標準的な治療の例

  • (1)視覚障害・・・白内障 → 水晶体摘出手術、網膜剥離網膜剥離手術 瞳孔閉鎖 → 虹彩切除術、角膜混濁 → 角膜移植術
  • (2)聴覚障害・・・鼓膜穿孔 → 穿孔閉鎖術、外耳性難聴 → 形成術
  • (3)言語障害・・・外傷性又は手術後に生じる発音構語障害 → 形成術 唇顎口蓋裂に起因した音声・言語機能障害を伴う者であって鼻咽腔閉鎖機能不全に対する手術以外に歯科矯正が必要な者 → 歯科矯正
  • (4)肢体不自由・・・関節拘縮、関節硬直 → 形成術、人工関節置換術等
  • (5)内部障害
    • ●<心臓>・・・先天性疾患 → 弁口、心室心房中隔に対する手術
    •         後天性心疾患 → ペースメーカー埋込み手術
    • ●<腎臓>・・・ 腎臓機能障害 → 人工透析療法、腎臓移植術(抗免疫療法を含む)
    • ●<肝臓>・・・ 肝臓機能障害 → 肝臓移植術(抗免疫療法を含む)
    • ●<小腸>・・・ 小腸機能障害 → 中心静脈栄養法
    • ●<免疫>・・・ HIVによる免疫機能障害→抗HIV療法、免疫調節療法、その他HIV感染症に対する治療

 引用:厚生労働省ホームページ 自立支援医療の概要

 

【法別16】育成医療

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更生医療の子どもバージョンと思っても大丈夫ですが、子どもの場合は将来的な障害に対する医療助成も含まれるため、若干更生医療とは異なる部分もあります。障害がある又は将来に障害が残ってしまう可能性がある18歳未満の児童が対象です。

対象となる障害と標準的な治療の例

  1. (1)視覚障害・・・白内障、先天性緑内障
  2. (2)聴覚障害・・・先天性耳奇形 → 形成術
  3. (3)言語障害・・・口蓋裂等 → 形成術
    •         唇顎口蓋裂に起因した音声・言語機能障害を伴う者であって、
    •         鼻咽腔閉鎖機能不全に対する手術以外に歯科矯正が必要な者
    •         → 歯科矯正
  4. (4)肢体不自由・・・先天性股関節脱臼、脊椎側彎症、くる病(骨軟化症)等に対する関節形成術、関節置換術、及び義肢装着のための切断端形成術など
  5. (5)内部障害
      • <心臓>・・・先天性疾患 → 弁口、心室心房中隔に対する手術
      •        後天性心疾患 → ペースメーカー埋込み手術
    • <腎臓>・・・腎臓機能障害 → 人工透析療法、腎臓移植術(抗免疫療法を含む)
    • <肝臓>・・・肝臓機能障害 → 肝臓移植術(抗免疫療法を含む)
    • <小腸>・・・小腸機能障害 → 中心静脈栄養法
    • <免疫>・・・HIVによる免疫機能障害→抗HIV療法、免疫調節療法、その他HIV感染症に対する治療
    • <その他の先天性内臓障害>
       先天性食道閉鎖症、先天性腸閉鎖症、鎖肛、巨大結腸症、尿道下裂、
       停留精巣(睾丸)等 → 尿道形成、人工肛門の造設などの外科手術

引用:厚生労働省ホームページ 自立支援医療の概要

 

病院窓口での対応

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受給者証と自己負担額管理票を確認しましょう。これは難病助成と同じような感じですね。そして公費併用医療なのか、併用外の医療なのかを判断して過不足なく請求をしましょう。会計時に保険区分の管理は医事課の仕事のひとつと言ってもいいでしょう。

 

自立支援医療を受けている患者さんは障害者手帳をお持ちの方が多いと思われます。地方自治体単独医療助成制度の「重度心身(体)障害者医療費助成制度」を受けていないか確認を取りましょう。市役所でも手帳と自動発生的に案内は行っているので問題はないと思われますが、制度案内も含めて障害者手帳をお持ちも場合は複数の医療助成を確認するくせをつけておきましょうね。

 

自立支援医療は3つをセットで覚えることがポイントですよ。

そして複雑になっている障害者支援の医療補助のひとつです。また複数公費併用に関してまとめていきたいと思います。それでは、新人さんがんばっていきましょう。