Hospital Up Diary

新人医療事務のプチ勉強会

【特定医療費(指定難病)助成制度】~指定難病患者への医療費助成制度~

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今回は指定難病の助成制度について簡単にまとめていきたいと思います。比較的、診療科に限らず利用頻度の高い助成制度になると思われるため、しっかりと理解する必要がありますね。

 

特定医療費(指定難病)助成制度とは

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 まず指定難病とは厚生労働省が認めた約330の疾病を指します。国によってリスト化された疾病に罹患した場合に医療費助成を受けれるものになります。しかしながら、病名があれば全ての人が対象となるわけではなく、一定以上の症状があり治療の必要性も加味されて支給されます。

 指定難病の一覧で調べたい 厚生労働省ホームページ

 指定難病をキーワードや五十音順で調べたい 難病情報センター

 

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 前述のとおり、一定以上の症状や診療の必要性を認めない限りは指定難病と診断されても助成制度の対象になるとは限りません。医師から指定難病を診断されたら、窓口である保健所へ申請する際にそれの証明をする必要があります。

カルテに難病の診断があるからと言って、助成対象者であると間違えないように注意が必要です。

症状の基準については各病名でまとめられているため厚生労働省ホームページを参照ください。参照するにあたって施行順にカテゴリーになっているため、上部告示番号で要確認が必要です。ややこしい( ;∀;)

 

申請方法と臨床調査個人票

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申請窓口は住所最寄りの保健所です。保健所ホームページで申請方法が確認できます。保健所によって確認書類が若干違うようなので、必ず患者さん自身に確認を取ってもらうようにご案内が必要ですね。

例外なく「臨床調査個人票」が必要となってきます。これは難病助成の申請について唯一病院が証明するものになりますので覚えましょう。特に指定難病の診断状況や症状・治療の必要性などをこの書類から判断されるので重要なものになります。必要に応じて検査結果データや画像CDデータなどを添付する必要があります。

臨床調査個人票は保健所で用意してくれない可能性があるため、病院での準備が必要です。病名毎の書類があり厚生労働省のホームページより取得できます。

臨床調査個人票のダウンロードはこちら

 

難病指定医と協力難病指定医

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臨床調査個人票は全ての医師が書ける訳ではありません

指定難病の制度では、都道府県・指定都市から指定を受けた指定医に限り、特定医療費支給認定の申請に必要な診断書を作成することができます。
指定医には、新規申請及び更新申請に必要な診断書の作成ができる「難病指定医」と、更新申請に必要な書類のみ作成できる「協力難病指定医」の2種類があります。 

引用:難病情報センター 指定難病について

 臨床調査個人票が書けるのは「難病指定医」と「協力難病指定医」です

大切なのは新規申請の場合は「難病指定医」のみしか作成することができません。指定医になると指定医番号が振られるため、医師毎の番号を必ず病院が把握するようにしておきましょう。

 

軽症高額該当について

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支給の可否は申請書類を審査することで決まります。重症度分類に照らし合わせながら、支給可否や支給内容について精査されます。

指定難病の診断を受け、申請した結果が支給対象外となった場合もあり得ます。支給対象外となった患者が総医療費33,330円/月以上が3回/年以上の支払いが発生した場合に限り、支給対象となる可能性があります。これが「軽症高額該当」です。

対象外の方でも医療費がかさむ場合の救済処置的なシステムですね。

 

症状の程度が疾病ごとの重症度分類等に該当しない軽症者でも、高額な医療を継続することが必要な人は、医療費助成の対象となります。

「高額な医療を継続することが必要」とは、医療費総額が33,330円を超える月が支給認定申請月以前の12月以内(※)に3回以上ある場合をいいます。
例えば、医療保険3割負担の場合、医療費の自己負担がおよそ1万円となる月が年3回以上ある場合が該当します。
※(1)申請月から起算して12月前の月、または(2)指定難病を発症したと難病指定医が認めた月を比較して、いずれか後の月から申請日までの期間が対象です。なお、「33,330円」には入院時食事(生活)療養の標準負担額は含みません。

引用:難病情報センター 軽症高額該当

 

指定医療機関と事前申請(登録)について

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難病助成を窓口で受けるためにはその病院や薬局が指定医療機関になっている必要があります。医療機関都道府県へ取り扱いの届出を行い、指定を受ける必要があります。

指定医療機関でない場合は、窓口で普段通りの医療費を支払い、償還請求(払い戻し)の手続きを保健所へする形となります。

指定医療機関のリストはこちらから確認できます。

指定医療機関とは、都道府県・指定都市から指定を受けた病院・診療所、薬局、訪問看護ステーションです。
指定難病の医療費の給付を受けることができるのは、原則として指定医療機関で行われた医療に限られます。

引用:難病情報センター 指定医療機関について

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助成制度の申請の際に受診する予定の医療機関を列記する必要があります。なんでだろう?わかりません!受給者証に事前に申請登録されている医療機関が記載されています。原則登録した医療機関へかかる必要があります。

最近では都道府県により登録しなくても良く、どこの病院へかかっても良いという形を取っている地域もあります。近隣の都道府県の状態を確認するといいかもしれません。受給者証にどこでもOKと記載されているのでわかりやすいと思います。

受給者証にどこでもOKの記載が無い場合は登録の必要があるかもしれませんので、登録されてない医療機関だった場合は、受診したことを保健所へ報告してもらうように案内をして、難病助成を適応してあげると良いでしょう。

 

有効期限と更新申請

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有効期限は原則1年です。都度更新が必要なので、患者さんは助成維持のために更新申請が必要です。昨今は保健所で臨床調査個人票を用意してくれなくなったため、作成依頼書が患者さんへ渡ります。作成依頼書を医療機関へ提出されますので、依頼書に書いてある内容の個人票を病院で用意して対応する流れとなります。

 

受給者証の交付と特定医療費証明書

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支給決定の場合は受給者証が交付されます。これを病院窓口で確認することで、指定病名の診療が助成対象となります。

窓口では有効期限と上限額を必ず確認しましょう!ちなみに、「適応区分」と記載された欄がありますが、これは限度額区分になります。限度額適応認定証が無い場合でも、この区分で処理をしましょう。限度額適応認定証を別に持っていた場合は、認定証の区分を優先して処理します。

3.都道府県・指定都市による医療受給者証の交付
(1)申請から医療受給者証が交付まで約3か月程度かかります。その間に指定医療機関においてかかった医療費は払戻し請求をすることができます。
(2)審査の結果、不認定となることがあります。その場合は、都道府県・指定都市から不認定通知が送付されます。

引用:難病情報センター

 

申請日まで適応日が遡及することが可能なため、適応を受けてから受給者証発行までに受けた医療費は「特定医療費証明書」を医療機関が証明することで、患者さんは払い戻し請求をすることができます。

申請日までしか適応が遡及できないため、指定難病の診断があった場合は助成制度の案内を早急にしてあげましょう。

 

助成の内容(上限額の基準)

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難病医療費の助成内容はイラストの3点となります。

個人的なミスとして食事療養費標準負担額を間違えて460円で請求して患者さんへご迷惑をかけてしまったことがあります。PC自動反映と思っていたら違った( ;∀;)皆さんもご注意いただければと思います。

具体的な助成内容は、以下のとおりとなります。

(1) 医療費等の3割を自己負担している患者さんについては、負担割合が2割になります(もともとの負担割合が1割又は2割の方は、変更ありません。)。

※ 平成30年8月から65歳以上で現役並み所得の方の介護サービスの負担割合が3割となりましたが、介護保険が3割負担の方は、医療保険の場合と同様に、対象となるサービスについて、難病の制度により負担割合が2割に軽減されます。

(2) 所得状況(区市町村民税の課税状況等)に基づき、月ごとの自己負担上限額が設定され、同月内の医療等に係る費用(複数の医療機関、薬局等で受けたものを合算する。)について、当該上限額を超えた自己負担額は全額助成されます。

 引用:東京都福祉保健局

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自己負担上限額の適応表になります。より細かいことを知りたい方はこちらを参照ください。「高額かつ長期」や「人工呼吸器等装着者」についても取り扱いが異なります。

ちなみに自己負担額上限は入外で通算されるため、高額医療費のように別々で計算しないように注意が必要です。

 

自己負担額上限管理票の取り扱い

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受給者証と必ずセットで配布されるのが、「自己負担額上限管理票」。月の自己負担額が決まっているため、これで管理をします。色々な病院や薬局で指定難病の自己負担を行うため、管理票に記録を残すことで自己負担額以上を請求しないようにする記録物になります。

なんとアナログな… 私が医事課に配属されて一番最初になんだこの制度は!と思ったものです( *´艸`)

記録はあくまで指定難病に関わる医療費に関してです。入外関係なく累積されます。自己負担額に達した場合はそれ以上を請求しないように注意が必要です。他院での支払い記録はPC上で記録できるようになっていると思われるため、確認してみてください。

自己負担額の上限に達した場合でも、しっかりと当月の医療費総額は記載していく必要があります。これは高額かつ長期の指標になります。自己負担が無い場合でもしっかりと記入しましょう。

地方助成(乳幼児・子ども・片親・精・障など)の福祉医療併用の場合は結果として自己負担0円ですが、記録は地方助成を適応する前の金額を記録してください。これは難病助成適応された段階での記録になります。

 

難病助成制度と他法の併用

難病助成制度と地方助成制度の三者併用

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地方助成制度はマル乳やマル子、マル親(母・父)、マル精、マル障、マル重など地区町村での医療助成制度となります。基本的には自己負担が0円になる地域が多いため、自己負担なしになる形で解説となります。東京など地方助成でも自己負担額が決まっている場合は、それに当てはめて考えてみてください。

適応順位は医療保険→②難病法→③地方助成となります。

保険証と受給者証をパッと提示されると新人は受付でパニックになってしまうと思われますが、優先順位さえ理解していれば特段難しいものではありません。図のように処理していきましょう。

前述の通り自己負担額上限管理票は③地方助成適応前の状態で記入しなければいけないのでご注意を!

 

生活保護(医療助成)との併用

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基本的には難病法が優先されます。医療保険に加入していない前提ですが、難病法100%負担になります。指定難病と関係のない診療であれば生活保護の医療扶助100%となります。どちらにせよ、患者負担は0円です。病院の処理は全然違うものになりますので覚えておきましょう。

入院時食事療養費は難病法100%給付になります。この場合は、難病の公費負担番号が若干ことなります。通常赤字の部分が「601」の番号となりますが、生活保護を受けている場合は「602」の公費番号が付与されます。こうした場合は入院時食事療養費は難病公費請求となります。

 

 

以上簡単でしたが、特定医療費(指定難病)助成制度の新人さんに知っておいてほしい内容でした。覚えてしまえばなんてことない制度です。しっかりと理解しておきましょう。

ちなみに地方によって都道府県単独の難病医療もあるので一部をご紹介までに。

東京都単独難病医療制度 詳細はこちら

愛知県特定疾患医療給付事業 詳細はこちら

 

全国の新人医療事務さん、がんばりましょう( *´艸`)

精神障害者医療費助成制度【マル精】について

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地方単独医療費助成制度のひとつに「精神障害者医療費助成制度」があります。

精神障害者の助成制度は「自立支援医療」「精神福祉保健法(入院制度」「心身障害者医療費助成制度」など多岐に渡り、取り扱う側も複雑な状態をなっています。

新人職員がつまづく公費負担でもあるのでしっかりとチェックしておきたいですね。

 

 

精神障害者医療費助成制度とは

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市区町村を単位に地方が独自に行っている医療費助成制度のひとつです。

その自治体が認める対象者に対して「マル精」の受給者証が交付されます。原則、健康保険を適応させた自己負担分を助成してくれるため、医療費の自己負担が無料になります。

詳細な取り扱いは各自治体により異なるため、ホームページなどで必ず確認しましょう。

今回は愛知県下の市町村を例に勉強をしていきたいと思います。

 

対象者と受給者証

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くどいようですが、対象者は地方自治体により異なります。概ね精神障害者保健福祉手帳自立支援医療受給者証が目安となっています。

そして一定の障害があると認められた場合は医療費助成の必須アイテムの受給者証が交付されます。この時に〇に精の字が当てられていることから「マル精」と呼んでします。

 

対象となるのは、市内に住所を有し、国民健康保険または社会保険等のいずれかの健康保険に加入している次の方です。

 注1) 子ども医療費助成制度、心身障害者医療費助成制度、母子家庭等医療費助成制度または後期高齢者医療制度の対象となる方は除かれます。

引用 愛知県蒲郡市ホームページ

 

平成31年7月現在の愛知県下にある市町村がマル精の対象としている条件と、助成内容をまとめた表があるためリンクを参考にしてください。複雑過ぎて患者さんへの説明が大変。。。

愛知県 市町村の精神障害者医療費助成制度一覧

https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/302002.pdf

 

 

対象疾患の確認

f:id:Hospital-UP:20200807204003p:plain精神障害者医療費受給者証(全疾病用)

受給者証には①対象疾患がある場合②全疾患対象の場合があります。加えて③通院のみ有効なども存在するため、制度自体は心身障害者医療費助成制度と類似していますが、受給者証でそのところをしっかりと確認する必要があります

確認方法は一番上の段のマル精の横に対象疾患がある場合はその内容を、全疾患対象の場合はそのように記載されています。

必ず有効期限もあるため、ここの要チェックです。

 

都道府県での取り扱い

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地方単独医療費助成制度は住所の都道府県のみで窓口使用ができます。

愛知県在住の場合は愛知県内の医療機関であれば窓口が無料となります。そのほかの都道府県に受診した場合は、窓口で支払いを行い、市役所へ払戻の手続きを行い助成金を受け取ります。

 

自立支援医療受給者証をお持ちの方

愛知県内での受診

医療機関の窓口に、精神障害者医療費受給者証(うす紫色)、自立支援医療受給者証(精神通院)、自己負担上限額管理票および健康保険証を提示すると、保険診療による自立支援医療の自己負担分(1割)が助成されます。

愛知県外での受診

精神障害者医療費受給者証(うす紫色)は使えません。医療機関窓口ではいったん自己負担分(1割)を支払い、後日、申請して払い戻しを受けます。 

引用 愛知県蒲郡市ホームページ

 自立支援医療の勉強がまだの方こちら(自立支援医療制度について)

 

払い戻しを受けるには

次のものを持参のうえ、市役所保険年金課福祉医療後期高齢者担当まで手続きにお越しください。

  • 領収書(受診者名と保険診療点数がわかるもの)
  • 精神障害者医療費受給者証 (うす紫色)
  • 保険証
  • 印かん
  • 振込先口座番号の分かるもの(ゆうちょ銀行は振込口座登録済みのもの)

引用 愛知県蒲郡市ホームページ

 

地方単独医療費助成制度のおさらい

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地方が医療助成する制度はいくつかありますが、原則的な取り扱いは一緒ですのでおさらいです。いわゆる福祉医療、マル乳(子)、マル障、マル母(親)、マル精などがあります。イラストのようになっていますが、基本的には「自治体により異なる」「県外病院では窓口利用できない」「給付に上限がある可能性がある」という事です。

そして医療費助成内容も同じのため、複数の制度を受けることは基本的にはありません。その時の優先順位もイラストの通りですが、これも自治体により若干異なるようです。

 

マル精の自治体による取り扱いの違い

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愛知県下での例です。

 

マル精は受給者番号が900001のように9からスタートします。マル精の中にはマル自やマル神などと表現する自治体もありますが、法別登録はマル精になります。愛知県一宮市はマル障(心身障害者医療費助成制度)の表現があるにも関わらず、受給者番号が9スタートの者はマル精で取り扱うようになっています。

 

マル障は受給者番号は500001のように5からスタートします。マル精と表記があるものがありますが、受給者番号が5スタートの場合はマル障の法別登録が必要になります。これらはマル精で全疾病対象者がマル精5スタートとなるようです。

このように自治体により取り扱いが複雑なため、自身の医療機関都道府県下の自治体をすべて把握しておくのがオススメですよ。一覧表があると便利ですね。

 

精神障害者医療費助成制度と自立支援医療の併用 など

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公費医療制度の中で精神障害者に関わる医療制度や持病にかかわる医療制度が複数存在します。各々の医療制度の趣旨は違いますが、複数に該当する場合があるため、併用を取り扱う可能性があります。

原則として、公費併用の手順として①健康保険→②国の公費制度→③地方助成の順位で適応して処理をします。

 

例【マル精と自立支援医療制度との併用】

①ますは健康保険を利用し、3割の自己負担となります。

②3割の自己負担から自立支援医療制度を利用し、1割の自己負担となります。

③1割の自己負担からマル障を利用し、自己負担0円となります。

POINT自立支援医療の自己負担上限管理票がある場合は、マル精を適応する前の医療費を記載すること。自立支援医療には「軽症高額・高額長期」など医療助成のルールがあるため、自己負担0円でも医療費の記載をしなければいけません。

 

「マル精で自己負担0円になるなら自立支援医療はいらないのでは?」と思いませんか。

どうやら公費の財源的な問題があるようです。公費の支出が国か自治体かで負担する側は大きな違いがあります。自治体は国の制度で支出が少なくなれば、もちろん負担軽減に繋がります。マル精で自立支援利用対象者は自治体から案内される可能性が高いですね。

病院としては手続きが複雑になるので、出来る事なら一元化してほしいものです。

 

自立支援医療との併用はあるあるパターンになると思われるため、よかったら他公費も以下で復習してみてください。

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精神保健福祉法における入院制度と公費負担

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精神疾患における公費の種類は多くて複雑です。

今回は精神保健福祉法に定められている入院制度と公費負担について勉強していきましょう。筆者自身は精神病院所属ではないので、間違いご指摘がある場合は、コメントをよろしくお願いします。

 

精神保健福祉法と公費負担

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精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(せいしんほけんおよびせいしんしょうがいしゃふくしにかんするほうりつ、昭和25年5月1日法律第123号)は、精神保健精神障害者福祉について規定した日本の法律である精神保健福祉法と略される。

引用 Wikipedia

 この法律による入院制度は5つに分けられます。その中でも第29条措置入院・第29条の2緊急措置入院は本人・家族の同意なしに病院や行政の判断で強制的に入院を命じることができるため、公費負担となっています。

 

精神保健福祉法の入院種類の違い

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【任意入院】第20条

 自ら希望して入院する場合です。もちろん患者本人の同意が必要で、公費負担はありません。

医療保護入院第33条

 医療及び保護のために入院の必要があると認められた時に、家族等や市区町村長の同意がある場合に入院する。公費負担なし。

 ここで言う家族等は患者の配偶者、親権を行うもの、扶養義務者及び後見人と指します。ただし①~⑤までの人は該当しません。①行方が分からない者②患者に対して訴訟をしている場合③家庭裁判所で免ぜられた代理人成年被後見人⑤未成年者

 市区町村の同意は家族等がその意思を表示することが出来ない場合に適応されます。

【応急入院】第33条の7

 医療及び保護の依頼があった患者について、急速を要して家族等の同意が得ることが出来ない場合に直ちに入院させなければ、医療及び保護を図る上で著しく支障があると認められた患者が対象です。精神保健指定医の診察により入院を行うことができます。公費負担なしで、応急対応は72時間以内となります。72時間以内に退院又は他の入院形態へ移行するようになります。

 

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前述のように措置入院と緊急措置入院は公費負担となるため、こちらを中心に勉強していきます。

 

措置入院とは

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都道府県知事は、第二十七条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは、その者を国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。

引用 精神保健福祉法 第29条 都道府県知事による入院措置

 都道府県知事の指示により精神障害者を強制的に入院させられる制度になります。強制入院とは言葉としては強く感じますが、精神障害により自傷・他害を加える可能性があり社会生活や生命を維持できない場合のみに適応になります。

 

措置入院のフロー

自傷他害の恐れがある精神障害者2名以上の精神保健指導医の診察を受けさせる

 診察には都道府県職員が同席し、診断結果が一致した場合に措置入院となります。

この指定医による診察を「措置診察」とか「措置鑑定」と呼ぶことが多い。緊急措置入院に引き続き行うときは「再診察」「再鑑定」と言うこともある。指定医2名は同時に診察してもよいし順次診察してもよい(順次診察の場合は一人目の診察が「一次診察」、二人目が「二次診察」と呼ばれる)。

引用 Wikipedia

措置入院が決定した場合は、入院措置を取る旨を書面で通知します。

  (38条の2、精神保健福祉法施行規則19条3項)

  指定様式は 厚生労働省 各種書類 からダウンロードできます

③指定の入院機関へ入院後は定期病状報告を3ヶ月又は6ヶ月毎に提出します。

 退院時には措置症状消退届や仮退院申請を提出します。

 ※退院については医師の診断結果を参考に都道府県知事が判断するもの

 

 

緊急措置入院とは

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措置入院はやや入院までの流れに時間や手続きを必要とします。障害の状況によっては時間をかけて入院を決定するためには医療や保護の介入が遅れてしまう可能性があります。その緊急的な対応として「緊急措置入院」が可能となります。もちろん強制入院のため公費負担となります。

都道府県知事は、前条第一項の要件に該当すると認められる精神障害者又はその疑いのある者について、急速を要し、第二十七条、第二十八条及び前条の規定による手続を採ることができない場合において、その指定する指定医をして診察をさせた結果、その者が精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人を害するおそれが著しいと認めたときは、その者を前条第一項に規定する精神科病院又は指定病院に入院させることができる。

引用 精神保健福祉法 第29条の2

 

緊急措置入院は応急的な対応のため、72時間以内にその障害者に対しどのような措置をするかを決定する必要があります。

都道府県知事は、前項の措置をとつたときは、すみやかに、その者につき、前条第一項の規定による入院措置をとるかどうかを決定しなければならない。

引用 精神保健福祉法 第29条の2-2

 

法別20公費負担の内容

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公費負担のある「措置入院」と「緊急措置入院」は図のような医療費の助成を受ける。所得税の金額により異なるが大きく分けて2種類の取り扱いとなる。

①全額公費負担(健康保険優先)

②月額自己上限がある(健康保険優先・一部公費負担)

 上限額は個人により変わる可能性もあるが概ね20,000円/月の負担がある

③移送費も公費負担となります。

 

仮退院について

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措置入院をした場合に、一旦退院をして経過を伺いながらそのまま退院させるべきかを検討する方法が適当である場合があります。その場合は「仮退院」という方法を取ることができます。

仮退院には都道府県知事の許可が必要で、病院が仮退院申請を行い、6ヶ月以内であれば仮退院許可を都道府県知事が指示することが可能となります。

仮退院後は退院後の状態などの診察を行い、そのまま退院になるケースや引き続き措置入院になるケースがあります。

指定医による診察の結果、措置入院者の症状に照らしその者を一時退院させて経過を見ることが適当であると認めるときは、都道府県知事の許可を得て、六月を超えない期間を限り仮に退院させることができる。

引用 精神保健福祉法 第40条 仮退院

 

簡単ではありますが以上です('◇')ゞ

実務ベースでとても参考になるサイトがありましたのでリンクつけておきます。

参考サイト

精神保健法の知識 http://xn--cjz12e.biz/

 

 

【重度心身(体)障者医療費助成制度】マル障の取り扱いについて

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地方単独医療費助成制度のひとつ通称【マル障】重度心身(体)障害者医療助成制度ですが、助成制度の名前自体も自治体により異なるようです。詳細は自治体ホームページ等で確認ください。ここでは概要と他の障害者医療費助成制度と一緒にまとめていきたいと思います。

今回は参考に埼玉県の制度をベースにまとめました。

 

重度心身(体)障害者医療費助成制度とは

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障害がある方とその家族の経済的負担を軽減するため、医療機関を受診した場合の医療費の一部負担金を県と市町村で助成する制度です。

引用 埼玉県ホームページ 重度心身障害者

自治体により取り扱いが異なる「地方単独医療費助成制度」になります。

障害者の経済的援助を目的として自治体が定める一定の条件のもと認定されたものについて医療費の助成をする制度となります。

制度対象者に交付される受給者証に〇印に障の文字が入っていることから、通称「マル障」と言われています。以下、マル障と紹介していきます。

 

対象者と受給者証

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マル障の対象者は自治体により若干異なります。医療機関都道府県下の条件は覚えておくといいでしょう。大枠として、「障害者手帳」「養育手帳・愛護手帳・愛の手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の所持者が認定に関わってきます。他にも自閉症なども対象となる地域があります。

対象者となる方

身体障害者手帳1~3級の交付を受けている方

療育手帳マルA、A、Bの交付を受けている方

精神障害者保健福祉手帳1級の交付を受けている方(ただし、精神病床への入院費用は助成されません)

後期高齢者医療制度の障害認定を受けている方

引用 埼玉県ホームページ 重度心身障害者

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 市町村単独で対象者を拡大している地域もあります。調べたい市町村ホームページを確認してくださいね

ちなみに各手帳はイラストのような方が対象で交付されるものになります。各手帳が交付されただけでは医療助成は受けれないため、マル障の申請が別途必要になります。手帳では医療費助成は対応できないので新人さんは注意です。

対象者に認定された場合は「受給者証」を交付されます。この受給者証を医療機関や薬局へ提示して初めて医療費の助成を受けることができます。

 

対象者とならない方

生活保護などを受けている方

小規模住居型児童養育事業者又は里親に養育されている方

市町村の乳幼児医療費助成制度又はひとり親家庭等医療費助成制度に登録されている方

平成27年1月1日以降に65歳以上で新たにこの制度の対象となる障害者手帳の交付を受けた方

詳しくはお住まいの市町村・町村役場にお問い合わせください。

引用 埼玉県ホームページ 重度心身障害者

 

受給者証の有効期限

マル障には有効期限があり、次のいずれか早く到来する日までが有効期限となります。

①原則3年間(受給者となった日以降3回目に到来する7月31日まで)

②65歳に到達し、後期高齢者医療制度に移行した場合はその前日まで

知的障害者の場合は、児童相談所等での次期判定年月の末日まで

身体障害者の再認定が決められている障害の場合は、その再認定次期まで

自治体により異なる場合があります。

 

給付内容と窓口対応について

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医療保険の一部負担金が助成(窓口無料)になります。入院中の食事代は助成の対象になりません。健康保険を優先的に利用し、最終的に自己負担する医療費をマル障で助成するイメージです。

助成対象となる医療費は

医療機関において入院・通院をした際に支払う医療保険の一部負担金の額です。医療費・薬剤費・治療用装具の一部負担金などが該当します。入院時の食事療養標準負担額、生活療養標準額は、助成の対象ではありません(助成対象としている市町村もあります)。

引用 埼玉県ホームページ 重度心身障害者

住所地で取得したマル障はその都道府県下の医療機関・薬局でしか窓口無料になりません。県外の医療機関はマル障を取り扱う事ができないため注意しましょう。

代わりに、市役所へ事後申請すれば自己負担分が返金される制度があることをご案内しましょう。

マル障による鍼灸院等の取り扱いの参考はこちら(東京都福祉保健局)

 

地方単独医療費助成制度のおさらい

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地方が医療助成する制度はいくつかありますが、原則的な取り扱いは一緒ですのでおさらいです。いわゆる福祉医療、マル乳(子)、マル障、マル母(親)、マル精などがあります。イラストのようになっていますが、基本的には「自治体により異なる」「県外病院では窓口利用できない」「給付に上限がある可能性がある」という事です。

そして医療費助成内容も同じのため、複数の制度を受けることは基本的にはありません。その時の優先順位もイラストの通りですが、これも自治体により若干異なるようです。

 

障害者医療制度の併用(他公費医療制度との併用)

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公費医療制度の中で障害者に関わる医療制度や持病にかかわる医療制度が複数存在します。各々の医療制度の趣旨は違いますが、複数に該当する場合があるため、併用を取り扱う可能性があります。

原則として、公費併用の手順として①健康保険→②国の公費制度→③地方助成の順位で適応して処理をします。

 

例【マル障と自立支援医療制度との併用】

①ますは健康保険を利用し、3割の自己負担となります。

②3割の自己負担から自立支援医療制度を利用し、1割の自己負担となります。

③1割の自己負担からマル障を利用し、自己負担0円となります。

POINT自立支援医療の自己負担上限管理票がある場合は、マル障を適応する前の医療費を記載すること。自立支援医療には「軽症高額・高額長期」など医療助成のルールがあるため、自己負担0円でも医療費の記載をしなければいけません。

 

「マル障で自己負担0円になるなら自立支援医療はいらないのでは?」と思いませんか。

どうやら公費の財源的な問題があるようです。公費の支出が国か自治体かで負担する側は大きな違いがあります。自治体は国の制度で支出が少なくなれば、もちろん負担軽減に繋がります。マル障で自立支援医療対象者は自治体から案内される可能性が高いですね。

病院としては手続きが複雑になるので、出来る事なら一元化してほしいものです。

 

マル障と後期高齢者医療制度の問題点f:id:Hospital-UP:20200728213622j:plain


通常65歳以上の場合は後期高齢者医療制度へ移行し、後期高齢者福祉医療制度=マル福を適応することで、自己負担助成を受け続けることができます。

ここで問題となるのが、後期高齢者医療は個人単位での加入で被保険者となることです。移行に伴い被扶養者で保険料を支払ってこなかった人も保険料が発生するためです。65歳以上の障害高齢者は、後期高齢者医療制度への加入は任意とされていますが、マル障の助成を受けるため、実質加入が強制状態となっています。

これが社会問題となり、なんやかんやで大多数の都府県では65歳以上でも引き続きマル障等を受けられるようになりました。一部の道県では未だ適応除外となっているままです。

 

 

【自立支援医療制度】精神通院・更生・育成の種類について

 

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 日本にはいろいろな医療の助成制度があります。今回は「自立支援医療制度」についてまとめていきたいと思います。精神科や透析センターなど様々な所で頻度の高い助成制度と思われますので復習がてら見ていただければと思います。

 

自立支援医療制度の概要

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自立支援医療制度には区分別に3つに分かれています。自立支援医療とはパッケージの名前なんですね。そして管轄は国になります。地方自治体単独の障害者医療助成とは別のものになりますので、切り離して考えましょう。

自立支援医療とは障害者に対する支援として医療費の扶助を目的としたものになります。

自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。

引用:厚生労働省ホームページ 自立支援医療制度の概要 

 

対象者について

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その内訳は①精神通院医療②更生医療③育成医療に分かれます

  • 精神通院医療精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者
  • 更生医療身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上)
  • 育成医療:身体に障害を有する児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満)

 引用:厚生労働省ホームページ 自立支援医療制度の概要 

 

医療費の助成内容

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自立支援医療は3つのどの医療助成でも、医療費が1割になります。さらに世帯所得によって限度額に上限が設定されています。逆に一定所得以上の場合は助成対象の患者さんでも公費負担を受けれない可能性があります。

中間所得以下は医療費の助成が受けれるため対象の場合は必ず申請した方が良いでしょう。障害医療は長期に及ぶことが想定あれるため、医療機関でも制度の説明を出来るだけの知識は必要ですね。

より詳しい所得制限は「利用者負担の基本的な仕組み」で参照できます。

 

申請と利用方法

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申請窓口は最寄りの保健所になります。申請後に審査を経て受給者証を交付されます。

申請方法は基本的には一緒ですが、お住まいの市町村のホームページにアクセスしてみましょう。

申請方法の一例

事前申請となります。指定医療機関で医療を受ける前に申請してください。

  1. 指定医療機関から所定の様式の「意見書」を書いてもらってください。
  2. 必要書類をお持ちのうえ各区福祉保健センターにお越しください。
  3. 意見書の内容に基づき、障害者更生相談所で更生医療が認められるかどうかの判定を行います。

引用:横浜市ホームページ

患者さんだけではなく、医療機関自体も自立支援医療を受け付ける病院として事前に都道府県へ指定医療機関としての届出をしている必要があります。

指定医療機関以外では公費の医療助成を受けることができません。

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患者さんが気を付けることとして、医療機関が指定医療機関だったとしても、事前に登録医療機関として申請しておく必要があります。

事前に患者さんは診察を受ける病院を申告しておく必要があります。薬局も同様です。

そして登録医療機関は原則1ヶ所になっているため注意しましょう。仮に登録していない医療機関で受診をした場合は、後日担当窓口へ事務手続きを行い返金を受けられるかもしてません。

 

【法別21】精神通院医療

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精神通院医療は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第5条に規定する統合失調症、精神作用物質による急性中毒、その他の精神疾患てんかんを含む。)を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する病状にある者に対し、その通院医療に係る自立支援医療費の支給を行うものです。

引用:厚生労働省ホームページ 自立支援医療の概要 

 精神疾患は長期治療が必要なケースが多く、経済的にも窮地に追い込まれる可能性が高いです。精神疾患を治療し、自立を支えるために医療費の助成を行う制度です。

適応疾患はこちらで確認できます。あくまで通院(外来)での助成となります。

 

【法別15】更生医療

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障害者手帳を有している方で、医療・治療によりその障害が軽減できると見込まれる場合に対象となります。特に透析患者さんは一般的に対象となる可能性が高いと思われます。病院での事務量が増えますが、確実に患者さんの経済的負担を軽くできるため、病院でも制度の案内を出来ると◎ですね。

 対象となる障害と標準的な治療の例

  • (1)視覚障害・・・白内障 → 水晶体摘出手術、網膜剥離網膜剥離手術 瞳孔閉鎖 → 虹彩切除術、角膜混濁 → 角膜移植術
  • (2)聴覚障害・・・鼓膜穿孔 → 穿孔閉鎖術、外耳性難聴 → 形成術
  • (3)言語障害・・・外傷性又は手術後に生じる発音構語障害 → 形成術 唇顎口蓋裂に起因した音声・言語機能障害を伴う者であって鼻咽腔閉鎖機能不全に対する手術以外に歯科矯正が必要な者 → 歯科矯正
  • (4)肢体不自由・・・関節拘縮、関節硬直 → 形成術、人工関節置換術等
  • (5)内部障害
    • ●<心臓>・・・先天性疾患 → 弁口、心室心房中隔に対する手術
    •         後天性心疾患 → ペースメーカー埋込み手術
    • ●<腎臓>・・・ 腎臓機能障害 → 人工透析療法、腎臓移植術(抗免疫療法を含む)
    • ●<肝臓>・・・ 肝臓機能障害 → 肝臓移植術(抗免疫療法を含む)
    • ●<小腸>・・・ 小腸機能障害 → 中心静脈栄養法
    • ●<免疫>・・・ HIVによる免疫機能障害→抗HIV療法、免疫調節療法、その他HIV感染症に対する治療

 引用:厚生労働省ホームページ 自立支援医療の概要

 

【法別16】育成医療

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更生医療の子どもバージョンと思っても大丈夫ですが、子どもの場合は将来的な障害に対する医療助成も含まれるため、若干更生医療とは異なる部分もあります。障害がある又は将来に障害が残ってしまう可能性がある18歳未満の児童が対象です。

対象となる障害と標準的な治療の例

  1. (1)視覚障害・・・白内障、先天性緑内障
  2. (2)聴覚障害・・・先天性耳奇形 → 形成術
  3. (3)言語障害・・・口蓋裂等 → 形成術
    •         唇顎口蓋裂に起因した音声・言語機能障害を伴う者であって、
    •         鼻咽腔閉鎖機能不全に対する手術以外に歯科矯正が必要な者
    •         → 歯科矯正
  4. (4)肢体不自由・・・先天性股関節脱臼、脊椎側彎症、くる病(骨軟化症)等に対する関節形成術、関節置換術、及び義肢装着のための切断端形成術など
  5. (5)内部障害
      • <心臓>・・・先天性疾患 → 弁口、心室心房中隔に対する手術
      •        後天性心疾患 → ペースメーカー埋込み手術
    • <腎臓>・・・腎臓機能障害 → 人工透析療法、腎臓移植術(抗免疫療法を含む)
    • <肝臓>・・・肝臓機能障害 → 肝臓移植術(抗免疫療法を含む)
    • <小腸>・・・小腸機能障害 → 中心静脈栄養法
    • <免疫>・・・HIVによる免疫機能障害→抗HIV療法、免疫調節療法、その他HIV感染症に対する治療
    • <その他の先天性内臓障害>
       先天性食道閉鎖症、先天性腸閉鎖症、鎖肛、巨大結腸症、尿道下裂、
       停留精巣(睾丸)等 → 尿道形成、人工肛門の造設などの外科手術

引用:厚生労働省ホームページ 自立支援医療の概要

 

病院窓口での対応

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受給者証と自己負担額管理票を確認しましょう。これは難病助成と同じような感じですね。そして公費併用医療なのか、併用外の医療なのかを判断して過不足なく請求をしましょう。会計時に保険区分の管理は医事課の仕事のひとつと言ってもいいでしょう。

 

自立支援医療を受けている患者さんは障害者手帳をお持ちの方が多いと思われます。地方自治体単独医療助成制度の「重度心身(体)障害者医療費助成制度」を受けていないか確認を取りましょう。市役所でも手帳と自動発生的に案内は行っているので問題はないと思われますが、制度案内も含めて障害者手帳をお持ちも場合は複数の医療助成を確認するくせをつけておきましょうね。

 

自立支援医療は3つをセットで覚えることがポイントですよ。

そして複雑になっている障害者支援の医療補助のひとつです。また複数公費併用に関してまとめていきたいと思います。それでは、新人さんがんばっていきましょう。

【労災保険】休業補償給付の内容や気を付けるポイント

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労災保険には様々なサービスがあります。

健康保険での傷病手当金と同じような給付制度が労災保険にもありますが、それが「休業補償給付・休業給付」になります。給与保証の側面がある制度のため、患者さんにとっては治療と同じようにとても大切なものになります。

病院サイドで取り扱いについてはしっかりと理解しておきましょうね。

 

休業補償給付・休業給付とは

傷病の治療のために、仕事が出来ずに給与がない(少ない)場合に一定の給付を受けることができます。給与保証なのです。

 

休業補償給付と休業給付の違い

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業務中の労働災害=「業務災害」 通勤中の労働災害=「通勤災害」と言います。

業務災害の場合は「休業補償給付」、通勤災害の場合は「休業給付」となります。やや給付内容に差がありますが、ほぼ一緒です。もう一緒と覚えてもらっても大丈夫だと思います。

 労働者が、業務または通勤が原因となった負傷や疾病による療養のため労働することができず、そのために賃金を受けていないとき、その第4日目から休業補償給付(業務災害の場合)または休業給付(通勤災害の場合)が支給されます。

引用:厚生労働省 休業(補償)給付 傷病(補償)年金の請求手続き 

 様式も8号と16号の6と書類の違いがあることもしっかりと覚えておきましょう。

 

休業(補償)給付を受ける条件

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①業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養のため、②労働することができないため、③賃金を受けていない、という3要件を満たす場合に、その第4日目から支給されます。

引用:厚生労働省 休業(補償)給付 傷病(補償)年金の請求手続き

①療養の必要性があったこと!

②労働が出来ないこと!

③賃金を受けていないこと!

④待期期間(3日間)を明けていること!

①~④をクリアすると支給開始となります。待期期間の補償については、業務災害と通勤災害で若干ルールが異なります。が、医療機関ではあまり関係はありません。

 

休業(補償)給付でいくらもらえるのか

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支給金額は「給付基礎日額」と言うのが基準となります。直近3ヶ月の平均所得でその6割が支給されるような感じになります。

給料の6割を保障してくれる制度になります。

 

休業(補償)給付っていつまでもらえるのか

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健康保険の傷病手当金は1年6ヶ月と期限に決まりがありますが、休業(補償)給付には期限の決まりはありません。よく勘違いしやすいところなので注意しましょう。

しかし、上記①~④の給付条件に当てはまらなくなる可能性があるので通常は支給が長期間に及ぶことはありません。もし重症・重度のため支給が長期間に及ぶ場合は傷病年金に切り替わることが考えられます。

傷病年金は治療開始から1年6ヶ月後も治療の必要性がある場合に、等級を審査します。傷病年金の等級に該当すれば休業(補償)給付を終了し、傷病年金に切り替わります。

もちろん、給付条件を満たし傷病年金等級に該当しない場合は休業(補償)給付を受給し続けることとなります。

 

ちなみに申請の事項は存在します。

休業(補償)給付は、療養のため労働することができないため賃金を受けない日ごとに請求権が発生します。その翌日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅しますのでご注意ください。

 引用:厚生労働省 休業(補償)給付 傷病(補償)年金の請求手続き

 

申請用紙(労災様式)の流れと注意点

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イラストの通りですが、①会社の証明(休んだよー・給与ないよー)②病院の証明(療養・治療の必要があったよー)の記入が必要です。①と②は順番はどちらでもOKです。

その申請用紙を③労働基準監督署へ提出します。支給審査の結果、受給できるという流れに成します。

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健康保険の傷病手当金と同じように、休業(補償)給付の請求は事後申請となります。

「休んだから給付してください」というものになります。よって、将来日・未来日の申請は出来ません。

当たり前ですが、患者さんはよく分からず〇月〇日~〇月〇日まで証明してくださいと持参されます。受け取り手もよく分からないまま処理してしまうと大変なことになります。証明日は必ず過去日になるまで証明してはいけません。

 

そういった書類は、持参された時にお預かり書類にする、また過去日になったときに再度持参してもらう、遠方の患者さんで書類だけのために来院できない場合は郵送で対応するなど、色々なパターンがあります。患者さんの利便性や書類保管の重要性、診療の進捗性などを総合的に判断して事前に院内ルールを定めておく必要があるでしょう。

新人医療事務さんはまずはこういったルールを覚えておきましょう。

 

簡単ではありますが、労災の休業(補償)給付になります。

分かりずらい所や、こういったことが知りたいなどありましたらコメントやお問い合わせをお願いします。

【労災保険】基本と窓口対応②

 

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基本と窓口対応パート②となります。パート①の続きからとなります。

 

基本的な窓口のやり取り

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とまぁこんな感じです。

①仕事中のケガや病気と分かれば、労災かを確認しましょう。

 特に、業務中か通勤中かは確認する癖をつけておきましょう

②患者さんの受診状況に合わせて提出様式の確認をしましょう。

③もし様式の提出が出来ない場合は、出来るだけ早く提出してもらうように説明。

 

特に仕事中にケガをした場合は、書類の確認より急いで受診!という流れになるのが普通です。そういった場合は往々にして指定用紙が無い場合があります。

 

労災様式を持ってきていない場合の対応

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労災様式を持ってきていないが労災診療を希望する患者さんへの対応の一例です。

考えられるシチュエーションのため、事前の院内ルールを決めておいて誰でも対応できるようにするといいと思います

 

例①自費で支払っていただく

その日の診療でかかったお金を自己負担10割で一旦支払ってもらいます。

次回来院に用紙を提出してもらい、全額返金して労災処理を進めましょう。

労災用紙提出時に自費で支払った領収書を持ってきてもらう案内を忘れずに。

 

例②健康保険で取り扱う

健康保険で取り扱うのはメリット・デメリットが生じます。

メリット:1)「労災希望があったが、やっぱり労災申請やめた」という患者さんだとしても健康保険を継続すれば良いだけになります。2)患者さんの経済的負担が和らぐ。自費で全額支払うより患者さんの一時的な支払が減額されます。

デメリット:労災様式を提出されたときに、レセプトの返戻処理をする必要があります。当月中で処理できると一番良いと思いますが、やはり医療機関としては手間がかかります。

 

例③未収にしておく

単純に当日の医療費の支払いをなしにします。後日労災様式を持ってきたときに、患者さんとの精算作業が無くなり、事務的な労災変更をするだけで済みます。

しかし、次回患者さんが来院されなかったり、労災様式をなかなか提出してくれない場合は医療費の未収金につながってしまうため、難しいところです。

 

他にも方法はあると思いますが、病院としてどういった方法で処理するかを新人さんは確認しておきましょう。

 

労災不承認の流れ

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様式5号で労災診療がスタートしても労災が承認された訳ではありません。

労災レセの請求を病院が行い、労基署が判断します。労基署の判断が不承認となれば、労災の取り扱いではなくなります後出しジャンケンみたいですね!

 

労災不承認の流れですが、

①病院からの労災請求

②労基署が判断 結果不承認

③労災の不承認通知が病院と患者さんへ届く

④健康保険として切り替えて、医療費の自己負担分を患者さんが支払い

となります。

 

労災だと思っていた患者さんへ請求しないといけないため、支払いを渋る可能性もありますね。いやはや。

 

腰痛(脊柱管狭窄症等)など労働で起きたのかが微妙な慢性的な疾患は認められにくい傾向があるようです。

 

私病という考え方

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労働災害によるケガ=労災保険、それ以外のケガ=健康保険の処理となります。

普通に考えればそうですよね。って感じですが、大切な考え方です。混合しないように処理をしましょう。

ちなみに労災は必ずその疾患に関して初診スタートになります。いつもかかりつけでかかっているクリニックに労災で診療を行っても再診にはなりません。

 

 

労災担当に丸投げではなく、自身でもしっかり理解して作業に取り組みたいですね。

明日も頑張りましょう!

【労災保険】基本と窓口対応①

 

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はくさ…労災保険は「労働者災害補償保険」と法律で定められた保険制度です。

第1条 労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

引用:労働者災害補償保険法第1条

今回は窓口業務において最低限必要であろう労災の知識についてお話していと思います ^^) _旦~~

 

労働者災害補償保険制度とは

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前述の通り、労働者に対して労働中に起きた疾病に関しての保証制度となります。

2013年10月1日より業務・通勤災害は一般の健康保険では原則として適応されないことが明文化されました。(健康保険法第1条国民健康保険法第56条)。業務・通勤中の事故・ケガ・疾病・障害・死亡の場合は労災が優先適応となるんですね。

 

特に、労災には「業務災害」と「通勤災害」に大きく分類されます。窓口で労災の場合は「通勤中によるものですか?」と聞くことを習慣づけることがポイントです。

通勤災害は職場から家と往復経路が多いと思われますが、その間に日常生活上やむ得ない行動により規定経路外であっても認められるケースがあります。例:独身者が帰路の途中でスーパーによって食品を購入した後に規定通勤経路で負傷した場合など。

参考:厚生労働省 通勤災害について

 

他にも特殊な例として、「業務災害と通勤災害が同時に発生」した場合の取り扱いです。実際に経験したことはないですが、先輩の経験談より

事例:通勤中に足を負傷しました。これは通勤災害として労災扱いとなりましたが、引き続き業務中に段差でつまづいてしまい手首を負傷してしまいました。

トホホな事例ですが、労災上では足の負傷と手首の負傷は別の疾病として取り扱うため、労災様式も業務災害・通勤災害とそれぞれ必要になりました。レセ請求は診療料など同一でかかるものは主たる病名の方で算定することになりました。

 

他にもいろいろなパターンがあると思いますが、判断に迷った場合は管轄の労働基準監督署に問い合わせて指示を受けると良いです。

 

労災で必要な書類について

 

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健康保険の場合は健康保険証。生活保護医療扶助の場合は医療券。など労災の場合も労災に取り扱うために必要な書類(病院提出書類)があります。たくさん種類がありますが、今回は比較的頻度の高いものを抜粋しました。

各種様式のダウンロード

 厚生労働省ホームページ 労災保険給付関係請求書等ダウンロード

 

 

初めて医療機関を受診する場合

 5号様式を提出してもらいます。(通勤災害の場合は16号の3)

記入が出来ているかをチェックして受け取りましょう。会社証明欄がありますが、退職していて未記入の場合は、患者さんに会社名と退職日を記入していただくと良いでしょう。在職中で会社が災害を認めていない場合に会社欄が記入されていないというパターンもありますが、処理方法は労基へ連絡して取り扱うのが良いでしょう。

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様式5号 見本

 

病院を変える場合(労災を他の病院で受診している場合)

 6号様式を提出してもらいます。(通勤災害の場合は16号の4)

医療機関からの転院の場合は、自身の医療機関が初めての受診でも様式5号ではなく、6号の回収をしなくてはいけません。あくまで転院に当たるのはクリニックや病院などの「医療機関」からの引き続きになります。鍼灸院や接骨院などは医療機関に当たらないため、施術を受けていても様式6号ではなく、様式5号となります。ご注意を。

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様式6号 見本

 

休業補償をもらう場合

 8号様式を提出してもらいます。(通勤災害の場合は16号の6)

これは健康保険で言う「傷病手当金」のイメージでOKです。若干異なる点もありますが、労災疾病で仕事を休み給与所得が無くなった(少なくなった)場合に給付される給与保証のような制度です。休業した期間を確認してお預かりしましょう。もちろん、将来日の証明はできないため、将来日が含まれていれば患者さんへ記入がまだできないことも説明が必要ですね。

傷病手当金意見書交付料のように休業補償証明書料としてレセ請求するため、文書料による本人負担はありません。

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様式8号 見本

 

障害補償をもらう場合

 10号様式を提出してもらいます。

一定の後遺障害が残った場合にその等級に応じて給付を受けれるため、記入を依頼されます。医療機関は10号用紙には「診断書のとおり」と記載があるように、別途診断書様式を用いて現在の後遺障害の詳記を行います

診断書料金は患者さんから4000円を直接徴収します。患者さんは後から申請すると文書料が戻ってきます。一部、労働局では文書料が医療機関からレセ請求できる地域もあるのでチェックが必要です。

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様式10号 見本

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障害補償請求申請用 診断書 見本

 

償還の請求する場合

 7号様式を提出してもらいます。(通勤災害の場合は16号の5)

 

非労災指定病院で一度窓口で支払った診療費を労基署へ請求する際に、様式7号を用いて行います。

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他にも、健康保険で前に診療を受けたことが労災適応と後から判断され、健康保険診療で支払った費用を労基署へ請求する際にも必要になります。

健康保険診療と同じく治療装具なども一度支払ってもらい、様式7号で患者さんから請求をしてもらいます。

 7号の種類として(1)通常(2)薬局用(3)柔道整復師用(4)はりきゅう用(5)訪問介護用と用途別に存在します。

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様式7号(1) 見本


受付で記憶しておくべき書類は以上になりますが、また様式書類説明の記事を載せたいと思います。今回はライトな感じで覚えておくものをおさらいしましたよ。

 

労災保険】基本と窓口対応②へ つづく

 

 

【傷病手当金】同じ疾患でも給付されるの?

 

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医事課に務めていると書類受付や書類作成管理をする機会もあると思います。

治療とは直接関係はないですが、書類により患者さんの財政的な支援が受けれるものが多いと思います。間接的に治療をしている、医療に関わっていると理解して正しく処理する必要があります。

 

今回は、治癒又は給付満了(1年半)で給付が終了になった場合でも、同じ病気で傷病手当金の給付が受けれるどうかです。

 

傷病手当給付の病名と給付期間

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傷病手当金の給付期間

傷病手当の給付は1年6ヵ月までの決まっています。休務が必要な疾病についても、給付中に発症した場合、その支給期間は疾病の治療が開始した時点を基準とします。

 

傷病手当金が支給される期間は、支給開始した日から最長1年6ヵ月です。これは、1年6ヵ月分支給されるということではなく、1年6ヵ月の間に仕事に復帰した期間があり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、復帰期間も1年6ヵ月に算入されます。支給開始後1年6ヵ月を超えた場合は、仕事に就くことができない場合であっても、傷病手当金は支給されません。

引用:全国健康保険協会 ホームページより

   https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139/

 

再発の場合の傷病手当の給付

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原則として同一疾患になった場合に支給期間はあくまで、1年半を限度とすることが分かります。しかし、給付が終了になった後に時間をおいて同一疾患の再発があった場合はどうなるのでしょうか。

病名的には同じですが、病気の状況は違う可能性もあります。給与保証の側面がある制度のため、1病名につき1回のみしかできないというのもおかしな話です。

例えば転倒にて大腿骨骨折し支給を受け、3年後に同じところを骨折した場合は、同一疾病だから支給対象外になってしまうのでしょうか。

医療機関としてはどのように対応するのが正解なのでしょう?

 

同一疾患の傷病手当の支給対応

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支給・不支給は保険者が個別に判断をします。医療機関としては支給に関して何も関与はできません。患者さんへは制度を正しく説明するしかできないのが現実です。

支給・不支給に関係なく、傷病手当交付申請書の算定は可能です。患者さんが申請したいといった場合は、ありのままを記入し、しっかり文書料を算定しましょう。

 

傷病手当以外にも給付に関する書類というのは沢山あります。これらは支給・不支給に関わらず、患者さんの要望があれば実態を記入して、文書料をいただきましょう。

「ルールでは支給されないので記入は出来ません」と医療機関で申請自体を断らないように注意する必要があると思います。

各申請先機関が判断を行います。患者さんへの案内も誠実に対応することが良いですね。

 

ブログ再開します。

 

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<a href="https://www.photo-ac.com/profile/927624">胡麻油</a>さんによる<a href="https://www.photo-ac.com/">写真AC</a>からの写真

しばらくブログ掲載をお休みしておりましたが、再開しますっ!

早速、明日から気ままにがんばります。

 

 

【保険外併用療養費】とその種類について

 

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病院の料金形態は健康保険における「診療報酬点数」によって決められていますよね。しかし、点数がない診療や道具やサービスの値段ってどうなっているのでしょうか。今回は、【保険外併用療養費】や【混合診療】についてさらっとまとめていきたいと思います('◇')ゞ

 

保険外併用療養費と混合診療について

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本邦では保険診療自由診療を一連の診療行為で同時に行うことを混合診療と呼び、混合診療を禁止しています。保険診療を行うのであれば、診療行為の中に保険適応外の治療法や薬剤を使用することはいけません (+_+) 

しかし、例外的に保険診療と併用しても良いサービスがルールで決められています。この併用しても仕組みを【保険外併用療養費】を呼びます

保険外併用療養費制度の「特別な料金」についての①金額の設定②患者からの徴収の有無は病院の任意となっています。

しかし、定めた内容は地方厚生局への報告義務があり、患者によって徴収しなかったり、金額を変更することは認められていません。

 

保険外併用療養費の種類と実費負担サービス

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保険外併用療養費には3種類あります。①評価療養②患者申出療養③選定療養です。

①評価療養=医療の高度化に対応するもので、将来的に保険導入を検討すべき医療技術をいいます。安全性や有効性・普及性などが確認されます。

②患者申出療養=未承認薬の使用や、患者さんからの申し出に基づき個別に許可される医療をいいます。制度自体も若く2016年に導入されています。

③選定療養=医療ニーズの多様化に対応するもので、患者自らの希望により受ける医療をいいます。

その他にも「直接療養の給付と関係のないサービス」については、患者さんから実費で徴収することが認められています('◇')ゞこれは診療と関係のないので混合診療にあたりません。実費徴収例は以下の通りです。

・日常生活上のサービス費(おむつ代・テレビ代・クリーニング代など)

・公的保険給付と関係のない文書費(証明代・診断書代・カルテ開示代など)

・医療行為であるが治療疾病に関係のないもの(予防接種・美容形成など)

・その他(外国人患者通訳代など)

一方で、シーツ代や清拭用タオル代、医療相談などは療養の給付と関係があるため実費徴収は認められません。

 

 評価療養について

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◇医療技術に係るもの【先進医療】

先進医療はその技術自体を厚生労働省が認め、その技術を提供できる病院の設備やスタッフ体制を届出を行った病院のみで適応されます。条件をクリアできれば、混合診療を認められます。

 ①既存の技術と異なった優れた効果をもつ「先進技術」として承認されたもの。

 ②医療技術ごとに有効性・安全性が確認され、承認される。病院の施設基準も設定されて、病院が届出により実施可能となる。

 ③第2項先進医療と第3項先進医療に分けられ、第3項は未承認の医薬品や機器を使用する。実施できる病院は個別に認められた病院に限る。

 

◇医薬品・医療機器・再生医療等製品に係るもの【治験・未承認使用】

①薬の治験に係るもの

 ・治験に係る検査・画像診断・投薬・注射は治験依頼者から徴収可能。

 ・治験内容を患者に説明できない(盲目的試験)の場合は適応できない。

 ・毎年、治験の実施状況を地方厚生局に報告しないといけない。

②医療機器(再生医療製品)の治験に係るもの

 ・試験の実施に関する基準をクリアしていること。

 ・患者への説明を前提とし、その自由選択と同意を必要とする。

 ・治験期間内の手術、処置の前後1週間に行われた検査等すべて治験依頼者の負担となる。

 ・毎年、治験の実施状況を地方厚生局に報告しないといけない。

③保険適応前の承認医薬品・医療機器等の使用

 ・そのと投与に係る薬剤料・医療機器費用に相当する費用を患者から徴収する

 ・承認を受けた日から薬は90日以内、機器は240日以内に行われた場合に限る

 ・患者への説明を前提とし、その自由選択と同意を必要とする。

④保険適応の医薬品・医療機器等の適応外使用

 ・一部変更承認申請につき、事前評価を開始して6月又は申請受理後2年の範囲で特別料金を徴収できる

 ・料金に関しては薬価基準の別表に定める価格を基準とする

 ・評価が終了した時点から追加効能・用法を保険適応する

 

病院で使用される医薬品や医療機器はすべて薬事承認を受ける必要があります。先進的で最新の薬や機器を使用した治療は保険適応外になり、それらを使用すると「混合診療」(違法)になってしまいます。これを一部認める制度ですね( `ー´)ノ

 

選定療養について

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◇利便性・快適性によるもの

 ①特別療養環境に係るもの=入院中の個室ですね ('ω')

 個室には患者の意思と基準を満たしていることが必要になります。病室の50%以下(一般)であること、4床以下1人当たり6.4㎡以上、私物収納・証明・テーブルや椅子などの設備を備えていること。

 料金は厚生局へ届出を行い、ディスカウントなどは禁止されています。但し、病院側理由により個室利用を強いる場合は個室料は請求できません。

 請求ができない例:患者同意なし・治療上の理由による・感染症隔離のため など

 ②予約診療

 予約時間から30分以上待たせず10分以上の診療時間を確保すること。外来時間の8割までとし、医師1人につき1日40程度を限度とする。夜間・休日・深夜でも徴収可能であるが、その場合は各種時間外加算は算定できない。

 ③時間外診療

 緊急性がないにも関わらず患者都合により時間外診療をした場合適応となる。料金は時間外加算の点数相当額を標準とします。

 

医療機関の選択性によるもの

 ①200床以上の病院の紹介状なし初診

  紹介状がない場合に初診料とは別に特別な料金を徴収できる。

 ②400床以上の病院の紹介状なし初診(特定機能病院 ・一般病床数)

  紹介状なしの場合は5000円以上支払いを受けなければいけない。しかし、正当な理由がある場合は支払いを求めなくてもOK ('◇')ゞ

 ①・②の再診の場合も徴収可能。再診の②は2500円となる。

 

 ◇医療行為等の選択性によるもの

 診療報酬上の回数限度を超えた診療行為の内、以下のものは実費と保険の併用が認められている。

 対象項目:腫瘍マーカー・各種リハビリ(デイケア)・180日超入院の入院料

 

保険外併用療養費と消費税について

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保険医療は非課税です。医療費は消費税がかかりません。しかし、実費負担をする保険外併用療養費は課税対象となります。単純に×10%の料金となります(2019.10現在)。

病院実費徴収分は課税対象となり、間接税として納税義務があることも把握しておかなければいけません。

 

国税局監査にて「個室料を徴収していないことは患者の不労所得になる」と指摘を受けた病院のお話を聞いたことがあります。個室料は病院都合での利用は患者から徴収できません。これは厚労省ルール化されています。これを説明しても、財務省ルールでは感覚が違うようです(+_+) 縦割社会… 徴収すれば不正請求で徴収しなければ患者の脱税となる…どうなっているんだ?( ;∀;) この話の結論は個室を利用するが、個室料は免責される免責書を記入してもらうということでした。いやはや、話が長くなりました。また実費徴収に関して記事にしたいと思います。

 

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【ひとり親家庭等医療費助成制度】について

 

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医療費の助成と言うのは、社会的弱者を守るように出来ています。社会生活で困ったことがある場合は、ほとんどの場合がなんらかの助成や扶助を受けることが可能です。日本って素晴らしいですね( `ー´)ノ

もちろんひとり親=母子家庭・父子家庭を対象とした助成制度があります。ここで紹介する【ひとり親家庭等医療費助成制度】は「片親」でなくても支給を受けられるケースもあります。地方単独医療費助成制度になりますので、おさらいがてらここも紹介していきたいと思います。

 

地方単独医療費助成制度とは

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ひとり親医療の助成は「地方単独医療費助成制度」の一部に入ります。管轄はお住まいの市町村になり、申請や相談窓口は市町村役場となります。

・市町村により支給内容が変わります。これは政策や財政状況が関係してるんじゃないかと思います('◇')ゞ

・住居の都道府県のみ有効です。県外では窓口給付を受けられませんが、領収証と申請用紙を役所へ提出すれば還付(払戻)の請求が可能です。

地方単独制度の中でも状況によって複数該当する方もいると思います。その場合は優先順位が決められており、その制度の申請をする必要があります。代表的な優先順位を描きましたが、これも市町村によって取り扱いが異なります。

病院職員は自身の病院住所に当たる都道府県内の市町村制度は理解しておく必要があるでしょう('◇')ゞ

 

ひとり親家庭等医療費助成制度のあらまし

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国家が基本方針を打ち立て、運用を地方自治体に任せている形態を取っています。なので、全国的に存在する制度ですが、内容は市町村により異なる訳ですね('ω')

地方自治体が具体的な支援策として自立促進計画を策定しています。その中には、経済や養育・就業などの支援があり、ひとり親医療はその一部の政策として存在しています。

 

対象者の条件

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対象条件は図の通りになります。子どもが18歳に達する年度末までが対象となります。他にも大きな条件としては「健康保険に加入していること」「所得制限以下であること」が挙げられます。地方単独医療費助成制度は健康保険に加入していないと対象となりません。所得制限は以下の表が一例となります。

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状況がひとり親状態やそれに近いような状態であったとしても、所得がある=裕福な経済状況であれば対象となりません。あくまで限られた財政資源の中で、社会的弱者救済の観点があるようです( ゚Д゚) しかし、市町村によっては所得制限を撤廃している所もありますので、自身のお住まいの市町村ウェブサイトを一度見てみるのも面白いかもしれません。

必ずしも「片親」状態でなくても、配偶者が一定以上の障害があり生活状況や経済的に「片親」と遜色ない状態の場合、適応になるケースもあります('◇')ゞ

 

助成制度の申請方法

 

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窓口はお住まいの市町村役場となります。健康保険に加入していることが、対象条件となっているため、保険証が必ず必要になります。親と子どもの保険証が必要になります。他には収入証明が可能な書類や各申請書類が必要になります。これらは、各役所によって必要書類やフォーマットが違うため、役所へ伺ってみると良いと思います。

 

給付内容について

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通常は健康保険適応で3割を自分で支払いますが、この3割負担が減免されます。給付内容は市町村によって異なりますが、以下の通りとなります。

定額制 3割負担をまるまる支給します。自己負担は0円=なしとなります。

定率制 3割負担を2割分のみ支給します。残り1割は自己負担で支払いとなります。

上限額制 1回若しくは1月で支給上限があり、はみ出し分を自己負担します。例では1回の受診で200円まで給付し、残りは自己負担となります。他にも自己負担200円で超過分は支給というパターンもあります。

 

病院で支給を受けられないパターン

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病院窓口で支給を受けられるのはお住まいの都道府県下の病院やクリニックのみです。もし県外の病院へかかった場合は、窓口支給対象外のため通常の自己負担分を請求されます。しかし、支払った医療費は役所へ申請すれば戻ってくるため安心してください。
医療費助成の証明証にも「県内のみ有効」と表記がありますが、知らない方が病院へみえたら払戻請求のご案内をしてあげましょう('◇')ゞ

 

 

簡単にまとめましたが、「ひとり親家庭等医療費助成制度」でした。この制度自体が地方自治体によってルールが異なるためアウトラインとして捉えていただければと思います。市によって「こんなに違うの!」と思うような地方単独医療があるので、病院お勤めの方は県下の地方単独医療の内容は把握した方が良いと思います( *´艸`)

 

 

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生活保護の【医療扶助】について

 

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憲法により日本人は「健康的で文化的な生活」が保障されています。それは生活保護法により生活が困窮した場合に、公費(税金)で生活を支えていくルールになります。

もちろん医療を受けるためには医療費の支払いが必要です。生活が困窮している場合は、医療費を支払うことができません。お金がないので、医療を受けれずに病気や死に至るというのはとても残念な話ですよね。生活保護法の中にはこう言った医療費を保障する【医療扶助】があります。

 

生活保護とは

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生活保護で支給されるものを【扶助(ふじょ)】と言います。【扶助】はすべての方が受けれるものではありません。生活保護を支給されるにはいくつか条件があります。ざっくりと以下の通りです('◇')ゞ

日本国籍かどうか

・利用できる資産はないか

・仕事で生計を立てれないか

・他に役に立つ制度はないのか

・生計を助けてくれる親族などはいないか

要するにすがるものが何もなく、最終的に助けを求める場所が生活保護です。生活保護の扶助は持ち金が0円でなくても受給できます( ゚Д゚) 原則、世帯単位での申請になります。

申請方法はお住まいの福祉事務所(市役所)の生活保護担当が窓口になります。申請した日から原則14日以内で受給の可否が回答されます。保護開始までの生活費がない場合に社会福祉協議会が行う「臨時特例つなぎ資金貸付」が利用できるケースがあります。

 

生活保護の扶助の種類

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いざ、生活保護と一口に言っても、その扶助内容は細分化されています

表の通りとなります。支給金額や支給範囲は社会情勢や受給者の生活背景によって、担当の福祉事務所・ケースワーカーが調整します。病院が関わるのは【医療扶助】になります。

医療扶助

原則、病院窓口支払いは0円になります。一部自己負担が発生する方もみえますが、ほとんどの場合が0円です。健康保険の療養給付と同様の範囲となっていて、保険外併用療養費は扶助の適応にはなりません( `ー´)ノ 保険外併用療養費の中でも「入院180超の入院料」については福祉事務所から支払われます。1ヶ月以上の入院の場合は生活扶助の一部が支給停止となるなど、やや複雑な側面もあります(+_+)

 

医療扶助のイメージ

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各種扶助の支給を受けるためには、そもそも生活保護の保護対象となる必要があります。それを例えば「生活保護ライン」とした時に、収入がそのラインを超えていれば生活保護の受給を受けることができません。仮に、収入がラインギリギリの場合は生活扶助や住宅扶助は受けることができませんが、突発的に発生する医療扶助を単体で受給できる可能性があります。そもそも、ライン以下の人は生活保護のより多くの扶助の受給けながら、医療扶助の対象となる。そんなイメージです。

一部収入がありつつ、医療扶助を受ける方がいる可能性があります。この場合、健康保険(社保)に加入した状態で医療扶助を受給しているかもしれません。7割は社保へ3割は医療扶助へ請求することになります。

しかし、国保後期高齢者との併用はありませんので注意してください。

医療扶助を病院窓口で受けるためには、病院が「指定医療機関」になっていることが必要になります。大抵は指定医療機関登録があると思いますが、事前に自分の病院が登録されているのか確認すると良いでしょう。指定医療機関かどうか、患者さんから問い合わせがくる可能性もあります。

 

医療扶助の手続き

 

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医療扶助を受けるためには病院へ「医療券」を提出する必要があります。病院は医療券を確認して、患者さんが生活保護受給者と言うことを判断します。

医療券の発行にて表のような手順に沿って行われます。

①保護・医療扶助の申請 ②要否意見書の発行 ③病院への要否意見書の依頼

④病院が要否意見書の記載 ➄記載した要否意見書の提出 ⑥医療券の発行

➆病院へ医療券の提出 ⑧診療を受ける

………複雑( ゚Д゚)! ちょー複雑な形で医療券を取得しないといけません。医療扶助を決定するのは病院ではなく、福祉事務所になります。福祉事務所が医療扶助の支給の可否を決定するために必要なのが「要否意見書」です。どのような疾患でどのくらいの期間の治療が必要かを医師に書いてもらうものになります。

要否意見書は概ね入院で3ヶ月毎、外来で6ヶ月毎に記入が必要になります。

しかし、病気やケガは医療券を待ってくれません。もちろん、早期に治療する必要があることがほとんどです。医療券の発行には時間がかかるため、医療券の仮発行書類に「診療依頼書」というものが即日発行され、医療券の変わりとして病院へ提出します。

 

「医療券」と「診療依頼書」

 

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生活保護受給者が医療扶助を病院窓口で受けるためには「医療券」の提出が必要です。医療券には支給期間や自己負担の有無・公費負担番号など病院が必要な情報が記載されています。前述の通り、医療券は発行に時間がかかるため急ぎの場合は「診療依頼書」というのが即時発行されます。診療依頼書は医療券の代わりになる書類になり、これを病院へ提出することにより医療扶助を受ける事が可能となります。

医療券は「1ヶ月毎」「入院・外来毎」「病院毎」に必要になります。生活保護受給で通われる患者さんも手続きが大変ですね( ;∀;)

緊急的な時や、患者が医療扶助の支給方法を知らないケースで医療券も診療依頼書も持参されない時が稀にあります。担当の福祉事務所へ連絡し、保護受給者かどうか、医療扶助を適応してよいか、医療券を後日送ってもらうようにお話をしましょう。

土日を挟んでくると、役場へ連絡できないため一度支払ってもらうか、患者さんの言葉を信頼して窓口0円で処理するか…病院事務としては未収金に成りえるケースのため、判断に迷う場面であります。各病院さんにより対応が異なると思いますので、ご注意していただければと('◇')ゞ ちなみに私の病院では窓口0円処理をして、翌平日に福祉事務所へ連絡し、医療券を発行してもらっています。今までトラブルはありません。

 

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 前述の通り、医療券の発行を待たずして「診療依頼書」で病院をかかる方がみえます。初診の患者さんの大半は診療依頼書で処理される印象です。

診療依頼書の提出時の流れはいくつかあると思いますが、私の病院では表のような流れが多いです。もしかしたら、自治体によって方法や流れが異なる場合がありますので、ご了承を('◇')ゞ

医療券と違ってとてもシンプルな構造です。違う点は要否意見書を患者(生活保護受給者)を介さずに、病院と福祉事務所で直接やりとりします。医療券も直接病院へ送られます。患者さん側からしたら、こっちの方が楽ですよね。しかし、原則は医療券を発行してもらう手続きを踏むことですのでご注意下さい。

コルセットなど健康保険の療養費の支給の受ける項目については別の医療券が必要になります。

 

 

生活保護の扶助を対応するためには指定医療機関登録が必要です。指定病院は「指定医療機関医療担当規定」と言うものがあり、細かな対応のルールもあります。特記すべきところは一度読んで覚えておくと良いでしょう。

生活保護の場合、窓口負担がないため過剰診療?になる可能性があります。医療事務サイドとしては、ここら辺にも目を光らせるといいですね。

生活保護との併用のお話はまた改めてしたいと思いますが、単体の場合はさほど処理は難しくありません。みなさま、ミスがないようにがんばっていきましょう( `ー´)ノ

 

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【療養費の支給】支給種類と委任代行支払い制度について

 

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健康保険に加入していれば、医療がすべて窓口で割り引いてくれるわけではありません。通常医療費は会計窓口で3割負担や1割負担の「自己負担額」のみを支払います。しかし、医療費の中には会計窓口ではなく、自己申請で返ってくるお金もあります( `ー´)ノ 病院は申請の案内をしてあげないといけないと思いますし、患者はしっかりと仕組みを理解して利用していく必要があるでしょう('◇')ゞ

 

療養費支給とは

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健康保険の医療費の支給方法は2種類に分けられます。「現物支給(療養の支給)」と「療養費の支給」です。現物支給は病院の会計窓口で自己負担分を自動的に計算されて、自己負担分のみを支払う方法です。通常はこの方法ですね('◇')ゞ

もう一つの療養費の支給ですが、これは会計窓口で全額負担をし、後から給付金を申請する方法になります。療養費の申請は有効期限があるため、給付が受けられる医療を受けた場合はすぐに申請して給付金を受け取りましょう( `ー´)ノ

 

療養費の支給を受けられる医療の種類

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〇高額医療費 

高額医療費は一定以上の高額な医療費がかかった場合に適応になります。医療費の上限は収入によって変わりますので、割引率は人によって変わります。現物支給を受ける方法もあり「限度額適応認定証」を事前発行することで窓口支払いの負担を軽減できます。詳しくは「高額医療費の利用方法」

 

〇はり・灸

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病院で医師が「妥当な治療手段がなく、治療効果がこれ以上認められない」と判断した場合に適応になります。医師の同意書があれば健康保険適応で施術を受ける事が可能です。同意は6ヶ月毎に必要になります。

大切なことは、妥当な治療手段がない→施術支給を認めるという流れです。もちろん治療手段がない訳なので、その疾患では病院での治療や薬は保険給付を受けられなくなります病院と鍼灸院での保険併用はできません( `ー´)ノ 適応症は以下です。

・神経痛 ・リウマチ ・頚腕症候群 ・五十肩 ・腰痛 ・頸椎捻挫後遺症

※委任代行支払い制度により現物支給を受けることもできます。

 

〇柔道整復(整骨院接骨院

柔道整復師が施術を行った場合でも健康保険が適応になることがあります。

適応は以下です。

・急性外傷性骨折 ・脱臼 ・捻挫 ・打撲 ・肉離れなど

骨折・脱臼は応急処置を除き、現に医師が治療している場合は医師の同意が必要)

非適応→日常生活による疲労や肩こり、腰痛やスポーツによる筋肉痛など

※委任代行支払い制度により現物支給を受けることもできます。

 

〇あん摩・マッサージ

鍼灸同様に医師の同意が必要で、同意は6ヶ月ごとに必要になります。

筋麻痺や関節拘縮などの症状があり、関節可動域や筋力増強の症状改善を目的としたものに適応されます。疲労回復や慰安目的のマッサージは適応外です。

鍼灸とことなり、病院での治療や薬も引き続き健康保険を適応することができます。

※委任代行支払い制度により現物支給を受けることもできます。

 

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〇治療用装具

いわゆる「コルセット」や「カラー」などが挙げられます。支給要件は「治療に必要」「定められた方法によりオーダーメイドで制作」「保険診療」が挙げられます。簡易なベルトタイプのものなどは、健康保険点数「固定帯加算」が適応となり、現金給付をするものがあります。ゴツイ装具は療養費の支給の対象となることが多いです。適当な表現でごめんなさい( ;∀;)

対象外となるものは、スポーツ・リハビリ目的、美容など治療を目的としないものが挙げられます。

ちなみにギプスなどは違いますよ('◇')ゞギプスは保険点数に掲載があるため、現物支給となります。

 

〇輸血用生血

通常輸血は保存血を使用します。保存血を使用する場合は保険点数に準じて現物支給を受けます。保存血がどうしてもない場合(これがほとんど考えられません)、生血を提供してもらい、提供者に血液代を支払います。この支払金額は療養費の支給対象となります。親族の場合は請求できません。レアケースですので、覚えなくてもいいくらいかもです(+_+)

 

〇海外での治療費

やむを得ない理由が必要です。「診療内容明細書」「領収証」「渡航先や期間が分かるもの」「パスポート」「申請書類」を合わせて提出します。日本語訳にする必要がある保険者もあり、その場合は翻訳者の証明も必要になります。

支給の必要性を認めれば、診療内容を保険点数に照らし合わせて支給額を決定します。領収内容がすべて3割負担等になる訳ではありません。

 

〇その他

保険者により健康保険の適応の幅がことなります。上記は法律で療養費の支給を義務付けられた法定給付になります。保険者ごとに独自の給付(任意給付)で色々な保障がありますので、自身の保険者のウェブサイトをみると面白いかもしれません。

 

委任代行支払いについて

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本来「療養費の支給」ですが、「現物支給」のように対応してもらえる制度になります。療養費の支給で自身で保険者に申請する所を施術所に代行して請求してもらうことで、窓口負担を自己負担金のみで対応してくれます。そのためには施術所に「療養費請求の委任状」を提出する必要があります。

あとは矢印の流れになります。鍼灸院や接骨院さんがこれをやってくれるかは、そこの施術所によりますので一度問合せて聞いてみるもの良いかもしれません。

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委任代行支払いにはいくつか方法があります。その中でも「受領委任契約」をしている施術所があります。これは施術所や施術団体が委任代行をしますよと協定や契約をしている状態であれば、患者からの委任状がなくても現物支給として取り扱えるシステムとなっている( ゚Д゚) 患者からすれば余分な手続きがなくて楽ちんですね('ω')

これにより施術所の不正請求がないように、この契約をしている所は定期的に行政から監査を受けています。

 

 

いろいろルールがあってめんどくさいですよね(+_+) しかし!申請して返ってくるお金るなら申請しなければ。保険証に書いてある保険者のウェブサイトにアクセスすれば申請書類はダウンロードできますし、病院の事務さんに聞けば答えてくれると思いますので不安な時はお尋ねしてみましょう。

知りたい事や分からない点は分かりやすく表現していきたいと思います。是非コメントよろしくお願いします。

 

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【高額医療費貸付制度】と【高額診療費受領委任払制度】

 

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医療はお金がかかる!そんなイメージですよね。実際そうなんです。特に入院費については、外来診療と違い莫大に費用がかさみます。そんな中、高額医療費制度を利用してなるべく負担なく医療を受ける方法があります。

それと付随して【高額医療費貸付制度】と【高額医療費受領委任払制度】があります。皆さん知っているでしょうか('Д')知らないですよね。むしろ高額医療費の仕組みも複雑なのにそんな事まで覚えていられないのが現状と思います。

 

どんな時に活用する制度なのか?

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高額医療費制度には事前に申請し、「限度額適応認定証」すると病院窓口での支払いが高額医療費に対応した分で済むという方法があります。しかし、なんらかの理由で「限度額適応認定証」が間に合わず、高額医療を全部払わないといけないとします。事後申請の高額医療費申請には払戻(償還)まで3ヵ月以上必要なケースもあります。

そんな時に、金欠で生活が困難になってしまう方のために【貸付制度】と【受領委任払制度】があります。二つともに健康保険診療における高額医療費制度を基礎として利用できる制度になりますのでご注意を( `ー´)ノ

 

高額医療費貸付制度

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医療費が高額になり、一時的にも支払いえない場合に高額医療費で返ってくる額の8~9割のお金を無利子で貸してくれる制度です。貸付を行ってくれるのは加入している保険者になります。保険者によってこの制度を取り扱っていない可能性もあるので注意が必要です。第一選択は限度額適応認定証ですが、それができない場合に金銭的な負担を和らげるため利用します。貸付を行った保険者は高額医療費で返ってくる金額をそのまま徴収します。高額医療の8割を借りた患者さんは、8割が保険者へ2割は患者さんへ返金(還付)されます

実際には限度額適応認定証の発行を待ってくれる病院も少なくないので、あまり利用される方はいないのかもしれません。限度額適応認定証を退院後も待ってくれる事は病院さんによって対応はさまざまです。必ずしも待ってくれる病院ばかりではないため、対応してくれなくてもそこは納得をしましょう('◇')ゞ

 

高額医療費受領委任払制度

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これについてはいくつかの呼び名がありますので、ここでは代表して「高額医療費受領委任払制度」と呼びます('◇')ゞ

先述の「貸付制度」とは異なり、病院へ受領委任依頼が保険者から来ます。簡単な話、高額医療費が下りるまでの病院に支払いを待ってくれというものです。保険者が病院へ「高額医療費下りたら、病院へ支払いします」と高額医療費の受領を患者から委任される形をとります。担保として患者は高額医療費の1割を一旦支払い、高額医療費が下りたら1割を返金(償還)される仕組みです。

これは病院サイドが受領委任をする意思表示が必要なため、病院によって取り扱いがあるかが変わります。病院からしたら、支払いが滞るため積極的にOKは出しにくい制度になりますね( ゚Д゚) 受領委任を断る病院もあります

国保保険料の滞納者の利用が多い印象がありますので、支払い能力が低い場合は病院が嫌がるケースもあります。しかし、医療は支払い能力とは関係なく提供しなければいけないため、悩ましいところです( ;∀;)

 

 

できるだけ入院が分かり次第「限度額適応認定証」の発行を急ぎましょう。約1週間程度で発行してくれます。もし困れば上記の制度もあります。それぞれ、名前は漢字ばかりで複雑ですが、内容がわかればさほど複雑な制度ではないため、ぜひ覚えておきましょう('◇')ゞ

 

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