Hospital Up Diary

新人医療事務のプチ勉強会

精神保健福祉法における入院制度と公費負担

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精神疾患における公費の種類は多くて複雑です。

今回は精神保健福祉法に定められている入院制度と公費負担について勉強していきましょう。筆者自身は精神病院所属ではないので、間違いご指摘がある場合は、コメントをよろしくお願いします。

 

精神保健福祉法と公費負担

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精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(せいしんほけんおよびせいしんしょうがいしゃふくしにかんするほうりつ、昭和25年5月1日法律第123号)は、精神保健精神障害者福祉について規定した日本の法律である精神保健福祉法と略される。

引用 Wikipedia

 この法律による入院制度は5つに分けられます。その中でも第29条措置入院・第29条の2緊急措置入院は本人・家族の同意なしに病院や行政の判断で強制的に入院を命じることができるため、公費負担となっています。

 

精神保健福祉法の入院種類の違い

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【任意入院】第20条

 自ら希望して入院する場合です。もちろん患者本人の同意が必要で、公費負担はありません。

医療保護入院第33条

 医療及び保護のために入院の必要があると認められた時に、家族等や市区町村長の同意がある場合に入院する。公費負担なし。

 ここで言う家族等は患者の配偶者、親権を行うもの、扶養義務者及び後見人と指します。ただし①~⑤までの人は該当しません。①行方が分からない者②患者に対して訴訟をしている場合③家庭裁判所で免ぜられた代理人成年被後見人⑤未成年者

 市区町村の同意は家族等がその意思を表示することが出来ない場合に適応されます。

【応急入院】第33条の7

 医療及び保護の依頼があった患者について、急速を要して家族等の同意が得ることが出来ない場合に直ちに入院させなければ、医療及び保護を図る上で著しく支障があると認められた患者が対象です。精神保健指定医の診察により入院を行うことができます。公費負担なしで、応急対応は72時間以内となります。72時間以内に退院又は他の入院形態へ移行するようになります。

 

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前述のように措置入院と緊急措置入院は公費負担となるため、こちらを中心に勉強していきます。

 

措置入院とは

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都道府県知事は、第二十七条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは、その者を国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。

引用 精神保健福祉法 第29条 都道府県知事による入院措置

 都道府県知事の指示により精神障害者を強制的に入院させられる制度になります。強制入院とは言葉としては強く感じますが、精神障害により自傷・他害を加える可能性があり社会生活や生命を維持できない場合のみに適応になります。

 

措置入院のフロー

自傷他害の恐れがある精神障害者2名以上の精神保健指導医の診察を受けさせる

 診察には都道府県職員が同席し、診断結果が一致した場合に措置入院となります。

この指定医による診察を「措置診察」とか「措置鑑定」と呼ぶことが多い。緊急措置入院に引き続き行うときは「再診察」「再鑑定」と言うこともある。指定医2名は同時に診察してもよいし順次診察してもよい(順次診察の場合は一人目の診察が「一次診察」、二人目が「二次診察」と呼ばれる)。

引用 Wikipedia

措置入院が決定した場合は、入院措置を取る旨を書面で通知します。

  (38条の2、精神保健福祉法施行規則19条3項)

  指定様式は 厚生労働省 各種書類 からダウンロードできます

③指定の入院機関へ入院後は定期病状報告を3ヶ月又は6ヶ月毎に提出します。

 退院時には措置症状消退届や仮退院申請を提出します。

 ※退院については医師の診断結果を参考に都道府県知事が判断するもの

 

 

緊急措置入院とは

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措置入院はやや入院までの流れに時間や手続きを必要とします。障害の状況によっては時間をかけて入院を決定するためには医療や保護の介入が遅れてしまう可能性があります。その緊急的な対応として「緊急措置入院」が可能となります。もちろん強制入院のため公費負担となります。

都道府県知事は、前条第一項の要件に該当すると認められる精神障害者又はその疑いのある者について、急速を要し、第二十七条、第二十八条及び前条の規定による手続を採ることができない場合において、その指定する指定医をして診察をさせた結果、その者が精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人を害するおそれが著しいと認めたときは、その者を前条第一項に規定する精神科病院又は指定病院に入院させることができる。

引用 精神保健福祉法 第29条の2

 

緊急措置入院は応急的な対応のため、72時間以内にその障害者に対しどのような措置をするかを決定する必要があります。

都道府県知事は、前項の措置をとつたときは、すみやかに、その者につき、前条第一項の規定による入院措置をとるかどうかを決定しなければならない。

引用 精神保健福祉法 第29条の2-2

 

法別20公費負担の内容

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公費負担のある「措置入院」と「緊急措置入院」は図のような医療費の助成を受ける。所得税の金額により異なるが大きく分けて2種類の取り扱いとなる。

①全額公費負担(健康保険優先)

②月額自己上限がある(健康保険優先・一部公費負担)

 上限額は個人により変わる可能性もあるが概ね20,000円/月の負担がある

③移送費も公費負担となります。

 

仮退院について

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措置入院をした場合に、一旦退院をして経過を伺いながらそのまま退院させるべきかを検討する方法が適当である場合があります。その場合は「仮退院」という方法を取ることができます。

仮退院には都道府県知事の許可が必要で、病院が仮退院申請を行い、6ヶ月以内であれば仮退院許可を都道府県知事が指示することが可能となります。

仮退院後は退院後の状態などの診察を行い、そのまま退院になるケースや引き続き措置入院になるケースがあります。

指定医による診察の結果、措置入院者の症状に照らしその者を一時退院させて経過を見ることが適当であると認めるときは、都道府県知事の許可を得て、六月を超えない期間を限り仮に退院させることができる。

引用 精神保健福祉法 第40条 仮退院

 

簡単ではありますが以上です('◇')ゞ

実務ベースでとても参考になるサイトがありましたのでリンクつけておきます。

参考サイト

精神保健法の知識 http://xn--cjz12e.biz/