Hospital Up Diary

新人医療事務のプチ勉強会

【特定医療費(指定難病)助成制度】~指定難病患者への医療費助成制度~

f:id:Hospital-UP:20200921143908j:plain

今回は指定難病の助成制度について簡単にまとめていきたいと思います。比較的、診療科に限らず利用頻度の高い助成制度になると思われるため、しっかりと理解する必要がありますね。

 

特定医療費(指定難病)助成制度とは

f:id:Hospital-UP:20200921143954j:plain

 まず指定難病とは厚生労働省が認めた約330の疾病を指します。国によってリスト化された疾病に罹患した場合に医療費助成を受けれるものになります。しかしながら、病名があれば全ての人が対象となるわけではなく、一定以上の症状があり治療の必要性も加味されて支給されます。

 指定難病の一覧で調べたい 厚生労働省ホームページ

 指定難病をキーワードや五十音順で調べたい 難病情報センター

 

f:id:Hospital-UP:20200921144016j:plain

 前述のとおり、一定以上の症状や診療の必要性を認めない限りは指定難病と診断されても助成制度の対象になるとは限りません。医師から指定難病を診断されたら、窓口である保健所へ申請する際にそれの証明をする必要があります。

カルテに難病の診断があるからと言って、助成対象者であると間違えないように注意が必要です。

症状の基準については各病名でまとめられているため厚生労働省ホームページを参照ください。参照するにあたって施行順にカテゴリーになっているため、上部告示番号で要確認が必要です。ややこしい( ;∀;)

 

申請方法と臨床調査個人票

f:id:Hospital-UP:20200921144014j:plain

申請窓口は住所最寄りの保健所です。保健所ホームページで申請方法が確認できます。保健所によって確認書類が若干違うようなので、必ず患者さん自身に確認を取ってもらうようにご案内が必要ですね。

例外なく「臨床調査個人票」が必要となってきます。これは難病助成の申請について唯一病院が証明するものになりますので覚えましょう。特に指定難病の診断状況や症状・治療の必要性などをこの書類から判断されるので重要なものになります。必要に応じて検査結果データや画像CDデータなどを添付する必要があります。

臨床調査個人票は保健所で用意してくれない可能性があるため、病院での準備が必要です。病名毎の書類があり厚生労働省のホームページより取得できます。

臨床調査個人票のダウンロードはこちら

 

難病指定医と協力難病指定医

f:id:Hospital-UP:20200921144154j:plain

臨床調査個人票は全ての医師が書ける訳ではありません

指定難病の制度では、都道府県・指定都市から指定を受けた指定医に限り、特定医療費支給認定の申請に必要な診断書を作成することができます。
指定医には、新規申請及び更新申請に必要な診断書の作成ができる「難病指定医」と、更新申請に必要な書類のみ作成できる「協力難病指定医」の2種類があります。 

引用:難病情報センター 指定難病について

 臨床調査個人票が書けるのは「難病指定医」と「協力難病指定医」です

大切なのは新規申請の場合は「難病指定医」のみしか作成することができません。指定医になると指定医番号が振られるため、医師毎の番号を必ず病院が把握するようにしておきましょう。

 

軽症高額該当について

f:id:Hospital-UP:20200921144046j:plain

支給の可否は申請書類を審査することで決まります。重症度分類に照らし合わせながら、支給可否や支給内容について精査されます。

指定難病の診断を受け、申請した結果が支給対象外となった場合もあり得ます。支給対象外となった患者が総医療費33,330円/月以上が3回/年以上の支払いが発生した場合に限り、支給対象となる可能性があります。これが「軽症高額該当」です。

対象外の方でも医療費がかさむ場合の救済処置的なシステムですね。

 

症状の程度が疾病ごとの重症度分類等に該当しない軽症者でも、高額な医療を継続することが必要な人は、医療費助成の対象となります。

「高額な医療を継続することが必要」とは、医療費総額が33,330円を超える月が支給認定申請月以前の12月以内(※)に3回以上ある場合をいいます。
例えば、医療保険3割負担の場合、医療費の自己負担がおよそ1万円となる月が年3回以上ある場合が該当します。
※(1)申請月から起算して12月前の月、または(2)指定難病を発症したと難病指定医が認めた月を比較して、いずれか後の月から申請日までの期間が対象です。なお、「33,330円」には入院時食事(生活)療養の標準負担額は含みません。

引用:難病情報センター 軽症高額該当

 

指定医療機関と事前申請(登録)について

f:id:Hospital-UP:20200921144159j:plain

難病助成を窓口で受けるためにはその病院や薬局が指定医療機関になっている必要があります。医療機関都道府県へ取り扱いの届出を行い、指定を受ける必要があります。

指定医療機関でない場合は、窓口で普段通りの医療費を支払い、償還請求(払い戻し)の手続きを保健所へする形となります。

指定医療機関のリストはこちらから確認できます。

指定医療機関とは、都道府県・指定都市から指定を受けた病院・診療所、薬局、訪問看護ステーションです。
指定難病の医療費の給付を受けることができるのは、原則として指定医療機関で行われた医療に限られます。

引用:難病情報センター 指定医療機関について

f:id:Hospital-UP:20200921144051j:plain

助成制度の申請の際に受診する予定の医療機関を列記する必要があります。なんでだろう?わかりません!受給者証に事前に申請登録されている医療機関が記載されています。原則登録した医療機関へかかる必要があります。

最近では都道府県により登録しなくても良く、どこの病院へかかっても良いという形を取っている地域もあります。近隣の都道府県の状態を確認するといいかもしれません。受給者証にどこでもOKと記載されているのでわかりやすいと思います。

受給者証にどこでもOKの記載が無い場合は登録の必要があるかもしれませんので、登録されてない医療機関だった場合は、受診したことを保健所へ報告してもらうように案内をして、難病助成を適応してあげると良いでしょう。

 

有効期限と更新申請

f:id:Hospital-UP:20200921144107j:plain

有効期限は原則1年です。都度更新が必要なので、患者さんは助成維持のために更新申請が必要です。昨今は保健所で臨床調査個人票を用意してくれなくなったため、作成依頼書が患者さんへ渡ります。作成依頼書を医療機関へ提出されますので、依頼書に書いてある内容の個人票を病院で用意して対応する流れとなります。

 

受給者証の交付と特定医療費証明書

f:id:Hospital-UP:20200921160829j:plain

支給決定の場合は受給者証が交付されます。これを病院窓口で確認することで、指定病名の診療が助成対象となります。

窓口では有効期限と上限額を必ず確認しましょう!ちなみに、「適応区分」と記載された欄がありますが、これは限度額区分になります。限度額適応認定証が無い場合でも、この区分で処理をしましょう。限度額適応認定証を別に持っていた場合は、認定証の区分を優先して処理します。

3.都道府県・指定都市による医療受給者証の交付
(1)申請から医療受給者証が交付まで約3か月程度かかります。その間に指定医療機関においてかかった医療費は払戻し請求をすることができます。
(2)審査の結果、不認定となることがあります。その場合は、都道府県・指定都市から不認定通知が送付されます。

引用:難病情報センター

 

申請日まで適応日が遡及することが可能なため、適応を受けてから受給者証発行までに受けた医療費は「特定医療費証明書」を医療機関が証明することで、患者さんは払い戻し請求をすることができます。

申請日までしか適応が遡及できないため、指定難病の診断があった場合は助成制度の案内を早急にしてあげましょう。

 

助成の内容(上限額の基準)

f:id:Hospital-UP:20200921160322j:plain

難病医療費の助成内容はイラストの3点となります。

個人的なミスとして食事療養費標準負担額を間違えて460円で請求して患者さんへご迷惑をかけてしまったことがあります。PC自動反映と思っていたら違った( ;∀;)皆さんもご注意いただければと思います。

具体的な助成内容は、以下のとおりとなります。

(1) 医療費等の3割を自己負担している患者さんについては、負担割合が2割になります(もともとの負担割合が1割又は2割の方は、変更ありません。)。

※ 平成30年8月から65歳以上で現役並み所得の方の介護サービスの負担割合が3割となりましたが、介護保険が3割負担の方は、医療保険の場合と同様に、対象となるサービスについて、難病の制度により負担割合が2割に軽減されます。

(2) 所得状況(区市町村民税の課税状況等)に基づき、月ごとの自己負担上限額が設定され、同月内の医療等に係る費用(複数の医療機関、薬局等で受けたものを合算する。)について、当該上限額を超えた自己負担額は全額助成されます。

 引用:東京都福祉保健局

f:id:Hospital-UP:20200921144306j:plain

自己負担上限額の適応表になります。より細かいことを知りたい方はこちらを参照ください。「高額かつ長期」や「人工呼吸器等装着者」についても取り扱いが異なります。

ちなみに自己負担額上限は入外で通算されるため、高額医療費のように別々で計算しないように注意が必要です。

 

自己負担額上限管理票の取り扱い

f:id:Hospital-UP:20200921163036j:plain

受給者証と必ずセットで配布されるのが、「自己負担額上限管理票」。月の自己負担額が決まっているため、これで管理をします。色々な病院や薬局で指定難病の自己負担を行うため、管理票に記録を残すことで自己負担額以上を請求しないようにする記録物になります。

なんとアナログな… 私が医事課に配属されて一番最初になんだこの制度は!と思ったものです( *´艸`)

記録はあくまで指定難病に関わる医療費に関してです。入外関係なく累積されます。自己負担額に達した場合はそれ以上を請求しないように注意が必要です。他院での支払い記録はPC上で記録できるようになっていると思われるため、確認してみてください。

自己負担額の上限に達した場合でも、しっかりと当月の医療費総額は記載していく必要があります。これは高額かつ長期の指標になります。自己負担が無い場合でもしっかりと記入しましょう。

地方助成(乳幼児・子ども・片親・精・障など)の福祉医療併用の場合は結果として自己負担0円ですが、記録は地方助成を適応する前の金額を記録してください。これは難病助成適応された段階での記録になります。

 

難病助成制度と他法の併用

難病助成制度と地方助成制度の三者併用

f:id:Hospital-UP:20200921144215j:plain

地方助成制度はマル乳やマル子、マル親(母・父)、マル精、マル障、マル重など地区町村での医療助成制度となります。基本的には自己負担が0円になる地域が多いため、自己負担なしになる形で解説となります。東京など地方助成でも自己負担額が決まっている場合は、それに当てはめて考えてみてください。

適応順位は医療保険→②難病法→③地方助成となります。

保険証と受給者証をパッと提示されると新人は受付でパニックになってしまうと思われますが、優先順位さえ理解していれば特段難しいものではありません。図のように処理していきましょう。

前述の通り自己負担額上限管理票は③地方助成適応前の状態で記入しなければいけないのでご注意を!

 

生活保護(医療助成)との併用

f:id:Hospital-UP:20200921144312j:plain

基本的には難病法が優先されます。医療保険に加入していない前提ですが、難病法100%負担になります。指定難病と関係のない診療であれば生活保護の医療扶助100%となります。どちらにせよ、患者負担は0円です。病院の処理は全然違うものになりますので覚えておきましょう。

入院時食事療養費は難病法100%給付になります。この場合は、難病の公費負担番号が若干ことなります。通常赤字の部分が「601」の番号となりますが、生活保護を受けている場合は「602」の公費番号が付与されます。こうした場合は入院時食事療養費は難病公費請求となります。

 

 

以上簡単でしたが、特定医療費(指定難病)助成制度の新人さんに知っておいてほしい内容でした。覚えてしまえばなんてことない制度です。しっかりと理解しておきましょう。

ちなみに地方によって都道府県単独の難病医療もあるので一部をご紹介までに。

東京都単独難病医療制度 詳細はこちら

愛知県特定疾患医療給付事業 詳細はこちら

 

全国の新人医療事務さん、がんばりましょう( *´艸`)