Hospital Up Diary

新人医療事務のプチ勉強会

生活保護の【医療扶助】について

 

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憲法により日本人は「健康的で文化的な生活」が保障されています。それは生活保護法により生活が困窮した場合に、公費(税金)で生活を支えていくルールになります。

もちろん医療を受けるためには医療費の支払いが必要です。生活が困窮している場合は、医療費を支払うことができません。お金がないので、医療を受けれずに病気や死に至るというのはとても残念な話ですよね。生活保護法の中にはこう言った医療費を保障する【医療扶助】があります。

 

生活保護とは

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生活保護で支給されるものを【扶助(ふじょ)】と言います。【扶助】はすべての方が受けれるものではありません。生活保護を支給されるにはいくつか条件があります。ざっくりと以下の通りです('◇')ゞ

日本国籍かどうか

・利用できる資産はないか

・仕事で生計を立てれないか

・他に役に立つ制度はないのか

・生計を助けてくれる親族などはいないか

要するにすがるものが何もなく、最終的に助けを求める場所が生活保護です。生活保護の扶助は持ち金が0円でなくても受給できます( ゚Д゚) 原則、世帯単位での申請になります。

申請方法はお住まいの福祉事務所(市役所)の生活保護担当が窓口になります。申請した日から原則14日以内で受給の可否が回答されます。保護開始までの生活費がない場合に社会福祉協議会が行う「臨時特例つなぎ資金貸付」が利用できるケースがあります。

 

生活保護の扶助の種類

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いざ、生活保護と一口に言っても、その扶助内容は細分化されています

表の通りとなります。支給金額や支給範囲は社会情勢や受給者の生活背景によって、担当の福祉事務所・ケースワーカーが調整します。病院が関わるのは【医療扶助】になります。

医療扶助

原則、病院窓口支払いは0円になります。一部自己負担が発生する方もみえますが、ほとんどの場合が0円です。健康保険の療養給付と同様の範囲となっていて、保険外併用療養費は扶助の適応にはなりません( `ー´)ノ 保険外併用療養費の中でも「入院180超の入院料」については福祉事務所から支払われます。1ヶ月以上の入院の場合は生活扶助の一部が支給停止となるなど、やや複雑な側面もあります(+_+)

 

医療扶助のイメージ

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各種扶助の支給を受けるためには、そもそも生活保護の保護対象となる必要があります。それを例えば「生活保護ライン」とした時に、収入がそのラインを超えていれば生活保護の受給を受けることができません。仮に、収入がラインギリギリの場合は生活扶助や住宅扶助は受けることができませんが、突発的に発生する医療扶助を単体で受給できる可能性があります。そもそも、ライン以下の人は生活保護のより多くの扶助の受給けながら、医療扶助の対象となる。そんなイメージです。

一部収入がありつつ、医療扶助を受ける方がいる可能性があります。この場合、健康保険(社保)に加入した状態で医療扶助を受給しているかもしれません。7割は社保へ3割は医療扶助へ請求することになります。

しかし、国保後期高齢者との併用はありませんので注意してください。

医療扶助を病院窓口で受けるためには、病院が「指定医療機関」になっていることが必要になります。大抵は指定医療機関登録があると思いますが、事前に自分の病院が登録されているのか確認すると良いでしょう。指定医療機関かどうか、患者さんから問い合わせがくる可能性もあります。

 

医療扶助の手続き

 

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医療扶助を受けるためには病院へ「医療券」を提出する必要があります。病院は医療券を確認して、患者さんが生活保護受給者と言うことを判断します。

医療券の発行にて表のような手順に沿って行われます。

①保護・医療扶助の申請 ②要否意見書の発行 ③病院への要否意見書の依頼

④病院が要否意見書の記載 ➄記載した要否意見書の提出 ⑥医療券の発行

➆病院へ医療券の提出 ⑧診療を受ける

………複雑( ゚Д゚)! ちょー複雑な形で医療券を取得しないといけません。医療扶助を決定するのは病院ではなく、福祉事務所になります。福祉事務所が医療扶助の支給の可否を決定するために必要なのが「要否意見書」です。どのような疾患でどのくらいの期間の治療が必要かを医師に書いてもらうものになります。

要否意見書は概ね入院で3ヶ月毎、外来で6ヶ月毎に記入が必要になります。

しかし、病気やケガは医療券を待ってくれません。もちろん、早期に治療する必要があることがほとんどです。医療券の発行には時間がかかるため、医療券の仮発行書類に「診療依頼書」というものが即日発行され、医療券の変わりとして病院へ提出します。

 

「医療券」と「診療依頼書」

 

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生活保護受給者が医療扶助を病院窓口で受けるためには「医療券」の提出が必要です。医療券には支給期間や自己負担の有無・公費負担番号など病院が必要な情報が記載されています。前述の通り、医療券は発行に時間がかかるため急ぎの場合は「診療依頼書」というのが即時発行されます。診療依頼書は医療券の代わりになる書類になり、これを病院へ提出することにより医療扶助を受ける事が可能となります。

医療券は「1ヶ月毎」「入院・外来毎」「病院毎」に必要になります。生活保護受給で通われる患者さんも手続きが大変ですね( ;∀;)

緊急的な時や、患者が医療扶助の支給方法を知らないケースで医療券も診療依頼書も持参されない時が稀にあります。担当の福祉事務所へ連絡し、保護受給者かどうか、医療扶助を適応してよいか、医療券を後日送ってもらうようにお話をしましょう。

土日を挟んでくると、役場へ連絡できないため一度支払ってもらうか、患者さんの言葉を信頼して窓口0円で処理するか…病院事務としては未収金に成りえるケースのため、判断に迷う場面であります。各病院さんにより対応が異なると思いますので、ご注意していただければと('◇')ゞ ちなみに私の病院では窓口0円処理をして、翌平日に福祉事務所へ連絡し、医療券を発行してもらっています。今までトラブルはありません。

 

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 前述の通り、医療券の発行を待たずして「診療依頼書」で病院をかかる方がみえます。初診の患者さんの大半は診療依頼書で処理される印象です。

診療依頼書の提出時の流れはいくつかあると思いますが、私の病院では表のような流れが多いです。もしかしたら、自治体によって方法や流れが異なる場合がありますので、ご了承を('◇')ゞ

医療券と違ってとてもシンプルな構造です。違う点は要否意見書を患者(生活保護受給者)を介さずに、病院と福祉事務所で直接やりとりします。医療券も直接病院へ送られます。患者さん側からしたら、こっちの方が楽ですよね。しかし、原則は医療券を発行してもらう手続きを踏むことですのでご注意下さい。

コルセットなど健康保険の療養費の支給の受ける項目については別の医療券が必要になります。

 

 

生活保護の扶助を対応するためには指定医療機関登録が必要です。指定病院は「指定医療機関医療担当規定」と言うものがあり、細かな対応のルールもあります。特記すべきところは一度読んで覚えておくと良いでしょう。

生活保護の場合、窓口負担がないため過剰診療?になる可能性があります。医療事務サイドとしては、ここら辺にも目を光らせるといいですね。

生活保護との併用のお話はまた改めてしたいと思いますが、単体の場合はさほど処理は難しくありません。みなさま、ミスがないようにがんばっていきましょう( `ー´)ノ

 

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